March 05, 2005

戸主制廃止:韓国民法改正関連Webレビュー

 今週半ばに、2008年から戸主制を廃止するという民法改正の動きがお隣り、韓国国会であった。
 このような動きがあることをまったく知らなかったので、まあ、ネット上で検索しながら、付焼刃でフォローしてみようと思った次第。せっかくだから、まあ、レビューということでまとめちゃうことにしたという、今回はまったくお手軽な企画。

1、「戸主制度」の廃止で何が改正されたのか

 まず、国内各新聞社の報道を横並びにしながら、基本的なところをおさえてみよう。そもそも、韓国の戸主制度とはどんなものだったのか?

「戸主制は、戸籍上の家長(戸主)を、父から息子、孫へと父系優先で継承し、子は父親の戸籍、妻は夫の戸籍にそれぞれ入ることなどを定めた民法の諸規定。」(読売)
「『一家の系統を継承した者』として戸主を規定。父親が家父長として大きな権威を持つと同時に戸主継承は父親から息子、男の孫など男系が優先され、妻や嫁は男性の下で『内助役』を強いられてきた。」(朝日)

 なんだか、わかったようなわからんようなのは、数行じゃあしょうがないとして、さっそく、より具体的な改正のポイントを列挙してみよう。

①戸主の登録 → 廃止
②子供は父親の姓を名乗る → 結婚時の同意があれば妻の姓も可
③再婚家庭の子の姓は実父のもの → 家裁の許可を得て変更可

 さらに戸主制というわけではなかろうが、次の2規定も廃止となったようだ。

④女性のみ6か月間の再婚禁止規定 → 廃止
⑤同姓同本男女の結婚を禁止 → 廃止
国内各紙の報道 読売 3/2、 毎日 3/3、 朝日 3/2

2.遺産相続の規定はどうなったの?

 どの記事も触れていないが、相続関係の規定は変更になっているのだろうか。

 1990年の改正で、子どもと妻がいる場合には、子ども1人当たりが2、妻が3の比率で、均等割にるのだそうだ。たとえば子どもが2人いる核家族の夫が死亡すれば、その遺産を、子どもは2づつで合計4、妻は3という割合で分けることになる。子どもが何人だろうが、遺産の1/2を受取る日本や北朝鮮に比べると韓国の妻は不利になっていたのだが…。

 現状については

「相続に関する相談事例」(同胞ネットワーク)

 改正動向を遡るには、次の調査研究論文の冒頭で解説されている。

 岸昭道「韓国ナクトン江流域農村生活文化の研究 その2」1999.09.15


 この論文によれば、戸主がすべてを相続する制度が解放後しだいに改められ、1990年には、ほぼ日本と同様の均分相続へと変更されているようだ。

3.最高裁の意見判決

 今回の法改正に先立って、2月3日には韓国の最高裁にあたる大法院が戸主制を意見とする判決を下している。

韓国 憲法裁、「戸主制」は違憲(東京新聞・Mainichi Interactive 2/4)
戸主制に事実上の違憲判断 廃止運動に勢い 韓国 (共同・産経新聞 2/3)
「新地平開いた」「旧正月最悪のお土産」戸主制の憲法不合致決定で評価分かれる(東亜日報 2/3)

 大法院は、韓国の戸籍業務を統括する役所的な機能もあるらしく、現在開かれている臨時国会に、新しい「個籍」制度に変更する法案を国会に提出しているらしい。1月10日に法案提出の方針を発表している。

最高裁判所、新しい身分登録制案作り(東亜日報 1/10)

 この記事は大法院の案を次のようなものだと紹介している。

「現在の戸籍謄本は戸主を中心に配偶者と親、子供、兄弟姉妹など家族成員の結婚、死亡などすべての身の上情報を盛り込んでいる。これに比べて最高裁の身分登録簿は、誰でも本人が基準になって本人の親と配偶者、子供など基本家族の名前と住民登録番号、本籍などの基礎情報だけが記載される。兄弟姉妹の情報は記載しない。」

4.大法院の「個籍」案と法務部の「家族簿制」案

 他方、政府法務部は、個籍のほかにもうひとつ家族単位のデーターベースをつくり、これを組み合わせながら利用するという別案を検討中だという。これを「家族簿制」というネーミングで紹介している。

 もし、大法院案と法務部案の双方が提出されれば、「国会は二つの案を土台に臨時国会以前に最終案を確定して戸主制廃止を議決した後、戸籍法を代替する身分登録法を制定することになる」と見とおしている。ということは、もうすでにここらへんの調整も済んでいるということなのかもしれない。
じっさいはどうなっているのか…。

韓国で戸主制度が廃止/「戸籍」から「個籍」へ(週刊金曜日 1/28)

5.個籍法の実施をまって2008年に戸主廃止

 おそらく、このような議論を踏まえてであろう。国内各紙も、「戸籍」制度の改正や施行を待ってから、2008年に戸主制の廃止を実施すると報じている。

6.儒教か日帝か

 さて、韓国系メディアを眺めていると、そもそも戸主制の起源がどこにあったのかが、議論されている様子がうかがえる。日本のメディアでは、儒教国だからということが強調されがちだが、日本の植民地支配が、このような差別的な意味合いを持たせたのだという捉え方も、かなり根強いようだ。

戸主制廃止に賛否両論(統一日報 9/10)

 この記事では、識者の指摘を紹介したあと、

「現在の戸主制は、日帝時に日本が朝鮮人に対する強制収奪と人的管理のために朝鮮民事令に基づいて導入したものを1960年に制定された民法で体系的に整備した、というのが本当のところのようだ。」
とまとめている。

 昨年9月10日のこの記事には、戸主制度の問題点が良く紹介されていて、ぜひ目を通しておいていただきたい。ちょっと長めに引用しておく。

「戸主制は男子血統をつなぐことに焦点をおいており長い間、男女差別の温床とされてきた。現行民法上では戸主である父親が死亡した場合、戸主継承の優先順位を息子、孫、娘、妻、父親の母、息子の嫁の順に定めている、例えば父と息子が同時に死亡した場合は、事実上家長の役割をする父親の母と息子の嫁、娘などの女性は皆、幼い孫が戸主となる新たな戸籍に入るようになる。3歳の孫が70歳のおばあちゃんの戸主になることもあり得る。  夫婦が離婚し母親が息子を引き取る場合、その母親は実家の戸籍に戻ったり、単独で戸籍を持つことができるが、その息子の戸籍は父親の方に入ったままになる。離婚した母親とその子女が同一の戸籍に入るのは、現行法上ではあり得ない。  極端な例だが、夫が浮気をして産んだ息子は、妻の同意なしに戸籍に入れることができる一方、再婚した妻が前夫との間の息子を現在の夫の戸籍に入れることは極めて難しい。舅(しゅうと)が戸主である場合は、前夫だけでなく舅の同意まで必要になってくるためだ。」

7.韓国保守層の反応

 さらに保守的な立場からの論評には次のようなものを見つけた。

戸籍が無くなっても家族の価値は守らなくては(朝鮮日報 3/2)

 日本との過去の関係を清算しようという雰囲気は、果たして今回の改正議論にも影響を与えているのだろうか。はっきりとしたことはわからないが、次のような記事を読むと、そんなことも考えたくなるのである。

国の根幹揺ぶる立法の嵐(統一日報 9/15)

 なお、この記事では、韓国国会の様子もうかがうことができる。やはり、日本との過去の関係を清算しようという雰囲気が、現国会にかなり漂っているようであるから、保守派を説得するのに日本帝国主義からの脱却というアプローチが、一役買う場面もあるかと想像してみたりもする。

 あー。あっしが自分でハングルのメディアを読めないこともあって、疑問点や空白が埋まらず、なんとももどかしい。ともかく日本語ベースでさらって以上のようにご紹介いたします。あくまでレビューとして、ご活用くださいませ。


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