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October 14, 2009

外国人登録制度の廃止と新たな在留管理制度

以下の原稿は会報(2009年8月号)のために2009年6月21日に書いたものです。先議の衆院の審議の最終段階ですが、この後国会は解散へと急展開した結果、ほとんど参院で議論されることなく、そのまま可決・成立することになりました。現在法務省はこの改正に関する施行規則の改正案をパブコメにかけ、11月6日まで意見を募集しています。何か意見を出そうという方はこちらから。おいらもぜひ意見を出したいと思っています



  通常国会で、AMF(国際結婚を考える会)審議中の二つの法案が、外国籍住民の登録制度を大きく変えようとしている。戦後間もなく制度化された外国人登録制度を廃止して、これまで日本人に限定していた住民基本台帳(以下「住基」)に、外国人も載せようというのだ。これまで排除されてきた外国人を住基に載せることで、日常生活や行政サービスの中で生じていた差別感や疎外感を少なくすることができる。この点では大きな前進となる改正であると言えるだろう。本稿は国会で審議中という段階で執筆しており、可能な限り最新の情報を注記の形で加えることにする。もし法案が可決成立しても施行まで3年の準備が必要だということだが、政府の法案をもとに、AMFの会員の皆さんに、配偶者等や一般永住者を対象にした在留カードに的を絞って、新たな登録制度のポイントを紹介することにしたい。

 他方、在日の方々を対象にした特別永住者証については、紙面の都合もあり、残念ながら別の機会に改めて紹介したいと思うので御容赦いただきたい。



■制度改正の背景
「不良外国人対策」と情報システムの刷新


 新しい制度の説明に入る前に、改正の経緯についてひとつだけ指摘しておこう。

 それは、議論の直接の契機が、広島の幼児殺害事件に代表される諸事件や子どもたちの不就学問題という社会的な不安感だったということだ。このため今回の法案には、いわゆる「不良外国人対策」や「アメとムチ」という発想が色濃く現れている。法案には住基への編入や再入国許可の取得を一部免除する一方で、離婚や死別の届出が義務化されたり、「配偶者としての活動」を行なわなければ在留資格を取り消すという「ムチ」も用意されている。



■「中長期在留者」と在留カード

 では、さっそく在留カードの紹介に移ろう。

 まずこのカードの対象となるのは、「中長期在留者」と呼ばれる外国人である。中長期在留者というのは、3か月を超える在留期間を与えられ国内に在留する外国人から、「特別永住者」、「外交」、および「公用」在留資格を持つ者を除外する。一般の永住者も在留カードの対象に含まれる一方で、婚約を理由に取得した「短期滞在」や、日本人配偶者と暮らしていても在留資格のない外国人は対象外となる。注1

 在留カードの券面に表記されるのは、氏名、生年月日、国籍、在留資格、在留期限、就労範囲、資格外活動許可の有無、およびカード番号である。在留カードについての事務は、市町村が行なう住民基本台帳の事務とは切り離されているため、市区町村はタッチしない原則であり、ほとんどの手続きが入国管理局で行われることになる。

 これまで外国人登録カードでは、交付申請も市区町村の窓口が受け付けていたし、カードも市区町村の窓口で受け取ることができた。しかし、改正後は、住所や転居の届け出以外は、すべて入国管理局が行なう。 まず、新規の在留カードは、入国審査や在留資格の審査に合わせ入国管理局も交付申請し、即日交付ということになる。ただし、在留カードを初めて受け取る場合には、券面に住所の記載はなく、引き続き市区町村で住基関係の届け行なう必要がある。



■住基への記載届と住所変更

 住基に関する届出は、もちろんのことだが、全て市区町村に対して行わなければならない。住基へ初めて記載を申請するためには、新規に在留カードの交付を受けてから14日以内に、カードを持参して市区町村の窓口に行なければならない。

 市区町村の窓口では、住基の記載と同一の住所を在留カードに書き込み在留カードは完成となる。市区町村は、住所を入国管理局に送達するので、とくに住所だけについての届出を入国管理局にする必要はない。 改正法の施行時には、外国人登録にあるデータがいったん住基に移されて仮の台帳が作られる。在留カードの発行後に市区町村役場への出頭が求められ、そのときに正式な台帳に格上げすることになる。



■住所変更は市区町村へ

 在留カードの保有者が転居した場合は、その届出を市区町村に対して行わなければならない。住基カードを利用しないで他の市区町村に転出する場合は、事前に転出の届も必要となる。期限は転居から14日以内。市区町村から転居先が送達されるので、入国管理局には転居を届け出る必要はない。



■氏名・国籍等の変更は入国管理局へ

 券面に表記されている事項のうち、住所以外のデータに変更が生じたときには、入国管理局に届け出て変更・訂正しなければならない。氏名や国籍が変更された場合や、生年月日を訂正するには、市区町村に届け出るだけでなく入国管理局にも14日以内に届け出る必要がある。氏名や国籍等の変更は、入国管理局から市区町村に通知され、住基上のデータも自動的に変更される。

 また、紛失や盗難や汚損に伴うカードの再発行の申請や、死亡や再入国許可の期限内に再入国せずカードを返納しなければならない場合も、市町村ではなく入国管理局に対して行わなければならない。こうした手続きはそれほど頻繁に必要になることではないとはいえ、より遠方の入国管理局に出向かなければならなくなる。



■在留カードの有効期限

 在留カードの有効期限は、在留資格の期限までとなる。在留資格変更や在留期限の更新の度に新たなカードの交付を受け、中長期在留者でなくなる場合は、カードを返納しなくてはならない。永住者の場合は外登カードと同様に7年ごとの更新になる。ちなみに、住基カードの有効期限も交付時の在留資格期限までとなる。



■離婚や死別や出生

 婚姻を主な理由として「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」や「定住者」の在留資格を得ている外国人には、配偶者との離婚や死別も14日以内に入国管理局に届け出なければならない。また、「世帯主」になっていない外国人は、住基上の変更の届もやはり14日以内に届け出なければならない。

 また、外国籍となる新生児の出生と日本国籍からの離脱の場合だけは、在留資格を取得する前であっても住基に記載することができる。出生の届出とともに、手続きができるようになるだろう。なお、これまでと同じように、60日以内に在留資格を申請する必要がある。



■届出の遅れは厳罰に

 住所の変更を実態どおりに常に正確に把握することが、今回の法改正の大きな狙いのひとつになっている。このため、住基への記載の届や住所変更の届の遅延は、厳しく罰されることになりそうだ。住基の記載届けや住所変更の届けは14日以内にということだが、もし90日を超えて遅延すれば、在留資格の取り消し事由となり、届け出なかった者には20万円以下の罰金もある。行政罰でだけはなく、刑事罰とされたことで、警察の捜査・摘発の理由にもなりうる。虚偽の届出以外は明確な罰則の規定がなかった外国人登録制度とはこの点が大きくことなる。

 なお、住所変更の遅れでも、夫から逃れるために住所変更を避ける必要のあるDV被害者については、厳罰の規定から除外されることになっている。



■みなし再入国許可

 一時的な出国に必要な再入国許可は、事前に手数料を払って申請して取得しなければならない。今回、その手続きを免除する「みなし再入国許可」の規定が新設されたのは朗報のひとつだ。出国時に再入国する意図を示すだけで、中長期在留者なら出国より1年以内か在留期限までのどちらか短い方の期間内、特別永住者は最長2年間までなら再入国許可ができる。ただし、免除されるのは、在留カードか特別永住者証明証と有効なパスポートを持っている外国人に限られる。母国の旅券を持ちえない難民や、国交がなく形式的に旅券が有効だと認められていない北朝鮮籍の方々は、これまで通りの再入国許可が必要になる。



■「配偶者としての活動」と在留資格の取消

 さて、今回の改正で、在留資格の取り消しの理由となりうる事項がいくつか増えたのだが、国際結婚関係者ならば見過ごせないのは、婚姻を主な理由として「日本人(永住者)の配偶者等」の資格を得ている外国籍配偶者をターゲットにした「配偶者の身分を有する者としての活動を継続して三月以上行わない」場合という取消事由であろう。(注2)

 在留資格の取り消しといういわば決定的な影響を与えるペナルティを課すにしては、配偶者としての活動とはなんぞやというところが、たいへん曖昧模糊としてしまっている。法律としては、たいへん奇妙というか稚拙になってしまった規定である。

 離婚協議なら有責者となるような日本人配偶者や永住者でも、この規定を念頭に相手を告発して、有利な立場に立とうとしたり、そこまでしなくても脅しに利用する輩が現れるに違いない。

 単なる「偽装結婚対策」にすぎないと国会では答弁されているが、現行法でも在留資格の更新を許可しないだけで3年以内に同様の効果が得られるにもかかわらず、あえてこの規定を使うメリットがどこにあるのか。離婚や死別後の届出と連動させれば、帰国か定住者や永住者への資格変更を促すようなこともできるだろう。しかし、別居や配偶者がいなくなってしまったような状況を想定するとなると、なかなか実際の運用を想像しにくい規定だ。



■国籍法の意趣返し

「配偶者としての活動」の規定については、野党の修正申し入れにもかかわらず、先議の衆院段階では政府与党がかたくなに応じようとしなかった。どうやら昨年08年末の国籍法改正のとき、偽装問題に過敏な反応を示し「不良外国人」の追放を声高に叫ぶことに使命感をみいだした与党の一部議員達が強く要求した影響が考えられる。いわば国籍法の仇をこの改正で打つような意趣返しようなところを感じるのだ。

 学校も企業も派遣業者もそして配偶者も、報告は面倒だが自分に都合の良いところだけ情報提供をすることになるだろう。一方、外国人本人には、集められた自分自身の情報をチェックすることすらできない。

 情報システムを駆使して、あらゆるところからニューカマーの外国人の情報を集め、「不良外国人」を見つけようという手法を極めると、入国管理局の権限を強めるだけでなく、彼らに情報提供の協力を請われている周囲の日本人の立場を相対的に強くすると、私は憂慮している。



■情報システムの刷新と不良外国人対策

 以上、国際結婚家族の視点から、新しい外国人登録制度の紹介してきたが、冒頭で指摘した「不良外国人対策」からはじまり「アメとムチ」の発想を持つことを確認していただけただろうか。

 最後に、会報係の方の依頼には含まれていなかったことだが、今後のために私が重要だと思う改正議論の二つ目のポイントを紹介しておきたい。それは、今回の改正が、入国管理局の情報管理システムの更新作業が本格化している中で議論されているということである。

 在留資格の審査を担当している入国管理局は、婚姻関係にとどまらず職業や収入や学業といった、多岐にわたる個人情報を日常的に集めているという点で極めて特殊な行政組織である。しかも、個人をこの社会から追放するまでの強い権限を持っており、たとえば、定義しだいで「不良外国人」を自動的にリストアップするというようなことだって、技術的には容易だということだ。

 たしかに今回の改正議論の流れを大まかに描くと次のようになる。(1)まず「不良外国人対策」を重視する立場から、入国管理局へ情報の一極集中を想定した案が提起された。しかし、(2)自治体側も利用しやすい自己が管理できる台帳を求め、在留管理カードシステムと住基に分けられた。とはいえ、(3)自発的な届出が期待できるほどの魅力が行政サービスにないという自治体側の弱みから、在留資格の審査を担保に届出を強制するというところに落ち着く。その結果、(4)両者は完全には分離されず、部分的だが基本的な個人データを共有した。

 私が注目しているのは、将来的にはどのような「連携」もできる基盤を確保したということである。



■今後の諸テーマ

 改正案には盛り込まれなかったが、主に日系人を想定して就学状況、納税状況、健康保険・公的年金の加入状況を入国管理局の在留カードシステムに自動送信すべきと唱える方々がいる。外国籍配偶者を想定すれば、日本人(永住・定住外国人)配偶者の氏名など基本データから所得額や納税状況といった情報だって、新たな法律を作れば送信できるだろう。そうした情報システムを「便利で公正」、あるいは「効率的」な行政サービスの基盤として歓迎するべきだろうか…。

「不良外国人対策」と「情報システムの刷新」は実は不可分な関係であり、おそらく今回をスタート地点として、数年や数十年といったスパンで問われるテーマとなるだろう。そういう意味でも、時代を大きく画する改正だと思われるのである。私は、行政サービスの整備は求めつつも、ジョージオーエルの「1984」や映画「Matrix」シリーズ流のオーソドックスな視点で警戒したいのだが、皆さんはいかがだろうか?



注1:衆院では、難民申請や在留特別許可の審査中である「仮放免」の対象者を、住基に載せることにして、参院に送付している

注2::衆院では「六月以上」に修正し参院に送付している



※各種パンフレットや基本的な資料は次のWebサイトに収録されている。

排除ではなく「共生」のための制度を

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Comments

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