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June 01, 2005

進むeパスポート計画-2 「ホストサーバーによるバイオデータの威力」

 eパスポート計画についての前回3月掲載の記事では、eパスポートでも、ホストサーバー側にバイオデータを蓄積しなくても、偽造パスポート対策にかなりの効果を発揮し得ることを指摘した。今回は、なぜそんなことに言及したのか、そのわけを説明したい。だがまず、この3か月間の情勢変化として、国会での旅券法の改正案の審議と、住基ネットワークを巡る地裁判決の2点に触れておきたい。

衆院を通過した旅券法改正案

 eパスポートを発行するための旅券法の改正案は、今国会に上程され、すでに衆院を通過している。野党民主党は外務委員会でも賛成の立場をとったが、衆院では賛否を変える可能性があるという。さすがに警戒する眼もあるわけだと思ったが、その理由を知ってガッカリした。あっしから見れば、その理由がじつにまとをはずしている。

「(民主党ネクストキャビネットの)閣議ではいったん賛成と決定したものの、衆院外務委員会での採決を控えた質疑の中で、行政経費として旅券発行の際にあらかじめ徴収されている効用分の手数料をめぐり、二重取りの疑義が生じたことを踏まえ、閣議で改めて議論を行い、与党側が修正要求に応じない場合、参議院では賛否を変える可能性が十分にあるとしつつ」 民主党HPより

 ようするに有効期限を残している従来のパスポートからの切り換え発行でも、がっちり交付手数料が徴収されるのは、どうかという論点だ。そこが最大の論点とはガッカリした。審議では、個人情報保護の観点からの質問もしかけていたのに…。
 この法案は秋にも、米国の査証免除プログラムがeパスポートのみを対象にする予定とされているので、これに対応するということでこの時期に審議されている。米国のこの手のプログラムの実施は、当初の計画よりも実施を延期することも少なくない。とはいうものの、日本は2006年11月までの延期を要求しているが、まあ、各プログラム対象国の動向や、実施時期は現在見直し時期に入っている米国のテロ対策議論の行方にも左右されるのだろう。

割れる住基ネットの判決

 ご存知のとおり、住民基本台帳法や住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)と個人情報保護の関係を巡る裁判で、5月下旬、石川と名古屋の地裁が正反対の判決を示した。個人情報の保護に問題ありとし、自らの情報の削除を求めた原告が、全国で13の訴訟を起こしているが、これを認めた金沢地裁の判決の数日後に、そんな問題なんかないよと棄却する名古屋の判決があり、今後、名古屋高裁の審議や、他の地域での裁判動向に、さらに注目が集まることになるだろう。

  *おわび 原告勝訴の判決があったのは金沢地裁でした。初回のアップ時に「富山」としていたのは誤りです。
        訂正してお詫びします。

バイオデータの
インデックス=名寄せ機能

 住基ネットワークに警告を与えた石川の判決では、個人情報として氏名や生年月日などに加え、登録番号コードの存在と、その名寄せ機能を大いに危惧するものであった。原理的には、国内の行政機関のすべてのデータベースにこれのコードを結びつければ、個人に関するすべてのデータがすぐに一覧できる。もし外部に漏洩すれば、行政機関だけでなく、民間で集積されている個人データが、それこそありとあらゆるものが集められることになるからである。そして、銀行や病院や保険会社や民間企業や団体が、暗に陽に住基ネットワークの番号コードの収集をはじめる可能性だって十分にある。
 そんな情報ネットワークを果たして市民は望んでいるのか。…これがこの問題の最大のテーマであろう。

 さて、eパスポートを考えるとき、同様の視点を持つことがとても大切だ。
 なぜなら、バイオデータは、番号や文字列によるコードと同様に、いや、はるかにより強力な名寄せ機能を持つからである。なにせ、身体情報だけに誰かがコードを割り当てる必要はない。いわば生まれたときから神様が各個人に与えて下さっている、インデックス情報である。そして人為的に変更することは、(普通の人には)できない。
 各データベースに納められている個人情報の「個票」に、バイオデータを記しておけば、他のデータベースの中から、同じバイオデータを持っている「個票」を取寄せ、並べてみたり、統合した個票を作り出すことができる。この意味では番号やコード
と変わらぬ機能=インデックス機能を果たすことができるのである。

指紋より高い顔写真の効果

 これまで指紋データの採取は、犯罪者イメージと結び付けられて嫌われてきた。とくに外国人登録にすべて指紋画像を載せてきた、外国人業界では目の敵になってきた。このため、バイオデータとして顔写真データを用いることは「指紋よりソフトだ」という説明がなされている。
 しかし、上記のインデックス機能という観点から考えてみれば、顔写真の方が指紋よりはるかに「使い勝手のいい」バイオデータということになるのかもしれない。
 なにせ、市民生活で顔写真データが採取される機会は多い。勤め先や通学する学校はもちろん、はやりの監視カメラだって、顔写真を撮影している。路上でも店舗や施設内でも、どんどん顔写真を撮られているだろう。角度が多少違っても同一性が確認できるのが、認証用の顔写真データの特性である。カメラの性能や保存する顔写真の精度しだいでは、こうしたデータもインデックスとして使え、それぞれのデータが名寄せされる可能性がでてくる。
 もちろん、テロ対策としてはこのことが意識されているだろう。なにせ、言語を超えたデーターベースの名寄せほど困難なものはない。国内では有効な氏名というインデックスも、アルファベットなのか、漢字なのか、アラビア文字なのか、ハングルなのか、文字が違ってしまえば、名寄せはとたんに難しくなる。じろーは、JIROか、JIROUかその昔はZIROなんて表記もあったくらいだ。
 この問題は顔写真を使って名寄せできれば、一発で解決することができそうだ。

 eパスポートがバイオデータを持てば、おそらくホスト側でもバイオデータを管理することになるだろう。そういったことは、法案には盛り込まれていないが、法改正を待たなくてもできるというのが、いつでも「フリーハンド」を持ちたがるお役所をはじめとする関係者の見方だ。旅券法の法で、eパスポートの発行が法制化され、同じく今国会でかかっている人身売買の防止に関する刑法等の改正の中に、チラッと入っている入管法の「他国に情報を供与できる」という規定があり、国会の議論としては、これだけでeパスポートとその個人情報ネットワークの実施が可能になる。そして、住基ネットの裁判では個人による登録削除が争点になっているが、旅券法改正案にも、バイオデータの格納が個人として拒否できるという条項はない。旅行者にとって、さしせまって不便になる恐れがあるのは、米国への出入国だけであるのに。

住基よりメリットのない出入国情報ネット

 さらに言えば、住基ネットには行政機関の業務効率アップや、脱税の防止といった大義名分がある。あっし自身も、現状はともかく、すべてを頭から否定する立場ではない。
 一方、eパスポートをはじめとする出入国管理情報ネットワークにある大義名分は「テロ対策」のみ。智慧もお金も、命さえ掛けてくるその手の関係者にどこまで有効なのかさえわからないまま、情報だけが蓄積させることにはならないか。効果とリスクのバランスシートは、住基ネット以上にリスクに傾く。

 今米国が提唱し、数カ国で取り入れられようとしている出入国管理情報ネットワークが、いったいどんな計画なのか、まだ、あっしも十分な知識を得ていないが、さらに見ていく必要があるだろう。
 それにしても、住民基本台帳法に反対した民主党が、今回の旅券法改正案に反対しない理由がわからないが、いったい上記の観点に気づいているの?

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