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January 29, 2005

今年も通常国会が始まった

1.波乱含みの幕開け

 今年も通常国会が始まった。初日の首相の所信表明演説が始まったちょうどそのころ、参院議員会館では、UNHCRのマンデート難民であるクルド系トルコ人父子2名を、母国に強制送還した法務省への抗議集会。
 集会直前には、さらに集団在特申請をした単身オーバーステイ外国人7人の、「即日」送還の第一報も飛び込む。自らも収容送還が迫る母子5人の姿を眺め、与党の公明党を含む各党の議員が、本会議の合い間を縫ってこれに参加する様子を眺めながら、まあ、そうやって今年も幕が開けた。

2.「少子化」が社会のメインテーマに

 他方、昨年2004年は、入管行政にある種の転換を迫る要素が出揃ってきた年だったということになるのかもしれない。
 なにより、昨年通常国会の後半、年金制度改正論議のあたりから、マスコミでも永田町でも長らく「老齢化」と言われてきたテーマが、「少子化」や「人口減」「労働力減」や「国内市場の縮小」といったテーマとして、変質しながらかなり強烈に再認識されるようになったとこだ。この意味で、厚労省が出生率統計の最新値を、年金法案の審議中に発表できなかったというエピソードは、痛烈なインパクトを放ったように思う。

3.元旦特集記事の論調

 そういえば、今年元旦の各紙の特集も、かなりの部分を「少子化」や「人口減」に割いていた。それこそあっしの実感では、社会的なテーマの特集記事のほぼ全てで触れられていたように思う。ただし、各紙の論調が「外国人の『輸入』を!」となっていたというわけではない。まだまだ、育児環境の改善や、結婚観や家族観の変質、さらに「ニート」のような職業観の問題として、あーでもないこーでもないと論じたあとに、海外の実状を紹介する「でわの神」的な分析があって、そのあとにようやくチョロッと外国人にも住んでもらうという案もあるわよと付加える。
 炬燵(こたつ)に入って蜜柑をほおばりながら、ザーッと眺めているとそんな印象だった。

2.第3次出入国管理基本計画

 昨年の入管法の審議の中でも、人口減少段階にあわせ入国管理行政のあり方を議論していることを大臣や入国管理局長は盛んに匂わせていたが、年末には、諮問機関である入国管理政策懇談会が、次の基本計画の前段ともいえる答申をまとめている。タイトルもそのものズバリの「人口減少時代における出入国管理行政の当面の課題」だ。
 その趣旨は、これまでの厳格化の流れをそのまま継承/強化する一方で、専門職や技術職を中心とする外国人労働者の受け入れて、国内の経済活力や国民生活の維持を目指すというものである。
 おそらく、この文書に沿いながら、基本計画が年度内に製作され、タイミングを見て発表されることになるのだろう。

3.官邸はテロ対策と観光立国

 また、法務省だけでなく、首相官邸内から直接示される方針に大きく左右される傾向も、しだいに定着してきた。
 3月から始まる愛知万博にあわせ、東アジア諸国からの観光客け入国審査の簡易化や、テロ対策本部の示した、指紋や顔写真といったバイオスキャンシステムの導入、航空会社に搭乗者を事前連絡させ、入国審査を先回りして行う制度の実施など、いくつかの制度改正が、今年のプランとして明確になっているが、こうした首相官邸発のテーマで今年がヤマ場となるものがある。
 愛知万博を見学したり、箱根や伊豆を旅行する人も少なくないだろうから、これがあの…、と思いだしていただきたいもの。
 というわけで、当面はオーバステイへの厳格化の方向に、専門職・技術職の外国人労働者の導入を巡る議論が加わり、ふたつの方向性が同時並行で議論になるだろう。その中であっしなりに直近の注目ポイントをいくつか挙げておこう。

3.参与員の構成は?

 まず第一は、難民認定制度における参与員のメンバー構成のだ。
 昨年改正された難民認定制度の実施が年度開けに予定されているにもかかわらず、マンデート難民の強制送還から始まった2005年。非政府系NPOを協力どころか対決姿勢に追い込んだ。年度内には参与員のメンバー構成に目鼻がつけられなければならない。こうしたなかで、法務省のお手盛りと受け止められないようなメンバーが発表できるのかどうかが注目される。

 もちろんこの送還は、年末から準備されていたことが分かっている。集団在特申請者の送還は、行政裁判の提起を阻止し、議論を長引かせられることを嫌って早期決着を狙ったものであろう。

4.即送還が定着するのか

 だとすれば、今回相次いだような即送還という運用が定着するのかどうかも注目したい。もし定着するとすれば、どの範囲に及ぶのかということになろう。
 もし、行政訴訟による係争の継続を避けることが主目的になるとすれば、これまでの「在留資格を巡る決定の二次的な審査は行政訴訟で」というこれまでの同省の方針を、実質的な転換をしたことになるという意味合いを持つことになる。
 そして、忌避される係争の範囲が難民認定事件に留まらないとすれば、集団在特だけでなく、日本人との配偶者のケースや、いわゆる「偽」日系人のケース。あるいは、昨年12月に施行されたばかりの在留資格の取消事件にも及ぶ可能性まで、考えられるのである。

5.看護/介護労働者の導入

 専門職・技術職の導入ということに目を向ければ、昨年11月下旬に合意されたフィリピンとのFTPに基づく、看護・介護職へのフィリピン人労働者の導入がどのように具体化されるかである。当初その人数が大規模になるとは思えないが、いわば職域を拡大する最初の分野であり、大切な先例になりうる。


6.最後に

 教科書的なところではあるが、会期は約5か月となる150日とされる。もし会期延長がなくても6月中旬までの長丁場となる。
 前半にあたる3月までの年度内の期間は、予算中心の審議が続き、直接予算措置に絡まない各法案の審議は予算案が通過してから、つまり新年度になってからと言うことになる。
 審議どころか法案の上程もまだというこの時期だが、とはいえ2月中には、各省が取りまとめた法案が、与野党の当該セクションに説明され、最終調整される時期となる。3月初旬の閣議決定を受けて正式に上程されるというのが、通常のタイムスケジュール。
 そろそろ法案の存在やその内容が、マスコミレベルでも報じられる時期になってきたのだが、いまのところ入国管理制度に関する限りそうした報道はない。
 さて、今回はそれぞれのシーンで、このブログサイトも覗いていただければ幸いです。

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