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October 04, 2004

長期オーバーステイ単身者の集団出頭で集会

出席した出頭者syudanB03[写真] 出席した出頭者

 在留特別許可(在特)を求め、先月21日に東京入国管理局に出頭した8人の支援集会が昨日(10月3日)東京新宿区で開かれていた。あいにく冷たい雨が降りしきる日曜日だったが、それほど広くない会場は満員で、通路に座り込む参加者もいるほど。他の予定と重なり遅れて駆けつけたあっしには、配布資料も残っていなかった。
 出頭した8人は、オーバーステイながら10年以上日本で暮らしつづけてきたバングラディッシュなどの国から来たアジア人。1986年から1994年にかけて入国した人たちで、以来母国に一度も帰国することなく、首都圏で働いてきた人たちだ。入国時の26歳だった平均年齢はすでに41歳になった。じつにあっしと同世代。良く見れば頭髪の薄さも目立つ。

 これまで在特といえば、日本人と結婚した外国人や、子どもを抱える外国人が主な対象となってきた。これまでの「相場」から言えば、在特の対象から外れている8人の単身者は、収容や送還といった強制処分が十分に予想される。瀬戸際に立つ人たちの集まりなのだから、『総決起集会』のような高揚した雰囲気を予想していたのだが、むしろ会場は微妙な空気に包み込まれていた。

 同様のケースで相談があれば、
「出頭のメリットはない」
入管法の運用実態を把握しているつもりの相談員としては、もちろんそう答える。
 いわば無謀な出頭とも言えるのだが、そういう無謀な出頭によってこそ、新たな流れや認定基準が生まれるきっかけになってきたこともまた事実だ。
 90年代初頭までの日本人の婚姻のケースだって、96年7月に通達が出る以前の母子のケースだって、日本育ちの子ども達のケースだって、みんな同じ過程からきっかけを掴んできた。今度だってそうなるベキだ。その一念から、この試みにぜひエールを送りたいと思う。

会場風景B02

(1)殺人罪だって15年で時効

 弁護団の弁護士、学識経験者、そして直接支援にあたる板橋区の支援団体のメンバーらの話し聞きながら、どんな言葉でこの動きを説明するのが良いのかをずっと考えていた。もし世論がこの動きを支持するとしたら、キャッチフレーズやキーワードは何だろう。
 有力なのは、やはり時効に関連するものだろうか。
 法律は「殺人罪」の時効を15年と定めている。現在殺人罪の時効を延長した方がいいという議論があるが、それにしたって、現行15年で殺人罪を公が追求できなくなるのに、なぜオーバーステイには時効がないのか。この原初的な疑問に、政府や入国管理局は有効な答えを用意していない。
 もちろん、行為でなくて状態に対する罪だからとか法的な理論は用意されていることはいるのだが、そんなん感情レベルには一向に響かない理屈にすぎない。しょせんは屁理屈。これと反対の結論を導く法理だって簡単に用意できるだろう。争うべきは理屈ではなくて、感覚と判断なのだ。なにより実態を安定させ、合法化するというのは、法律体系の基本的な「欠くべからず」的な機能なのだ。

(2)単身者にだって家族はある

 とくに支援団体メンバーが強調していたのは「単身者だって家族がある」という、いわば拡大家族的な捉え方だった。10数年安定して暮らしていれば、地域には顔なじみ的な存在になり、職場では中堅どころに落ち着いているものだ。一方、一度も帰国しなかった母国ではそれがすでに失われている。26歳から41歳まで海外で暮らした日本人が帰国することをイメージすればすぐにわかるが、すでに「帰って来てもねえ」という状況が待っていることは間違いがない。そして日本での暮らしを続ければ、これまでのつながりが全て保てる…。
 かつて阪神大震災のとき、「単身者」として一人暮らしの老人を扱い、周辺の社会的なつながりを断ち切ることがいかに人間を孤立させるかを考えなかったような方策が批判を浴びた。そういう類の目に見えず書類でも現しにくい財産を、社会がどこまで尊重できるのか。

(3)社会化

 おそらく拡大家族的な考え方と近い意味だと思ってもいいのかもしれないが、茨城大学の稲葉先生(社会学)は、「社会化」というモノサシを語っていた。欧州の社会運動論がご専門の方だから、おそらく「ソシオ…」とかいう横文字をひっぱっていらっしゃるのだろうけど、とにかく、フランスではオーバーステイの外国人を合法化する際の指標に、子どもであれ大人であれ、その外国人がどこまでフランスに「社会化」されているかを考えているのだそうだ。日本の入管制度や外国人政策に、このような概念はない。

(4)即戦力としての長期滞在者

 おりもおり、少子化とかFTA交渉とかで、再度外国人労働者の導入に関する政策提言が各方面から続いている。
 一橋大学の鈴木氏は、
「アジアの看護婦受け入れを巡ってもっとも抵抗が強いのは、日本語の問題。長期滞在者にはその問題がなく、優良な労働力としても捉えられる」
と語る。
 まあ、国際結婚家族を巡る諸テーマからアプローチしていることが多いあっしとしては「労働力」と呼ばれることに一定の拒否感もあるのだが、時節柄こうした経済効果的な観点からのアプローチも世論形成やロビーイング活動では大切であるに違いない。経済といえば格好がいいが、ようするに、すでに日本で暮らしている住民から見て得なのか損なのかという議論は、やはり無視すべきではなく、それぞれの立場なりに主張の仕方を考えなきゃならない時期に来ている感じがする。

会場風景B02 
なにせ、この集まりには後半部分しか出席できなかったので、弁護団やAPFSの話しをここに拾いだしてみることができない。できるかぎり、論点を整理しておこうと思ったものの、今回も中途半端に終わる。なのにここまで読み進めてお付き合いいただいた方には、まずはご報告ということで…、ご容赦。

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Comments

10月6日に出頭した8人は、違反調査官による長時間のインタビューを受けた後、収容されず帰国している。またこの日、次回の出頭日は指定されなかった。

Posted by: 渋谷次郎 | October 08, 2004 at 10:59 PM

11月26日、3度目の出頭に応じた8人は全員収容され、退去強制処分がいつでも進められる状態になった。

Posted by: 渋谷次郎/ニュース記事へリンク | December 13, 2004 at 11:12 AM

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