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May 13, 2004

入管法改正論議を観戦して

 難民認定の改正と不法滞在者の半減を目指した法案は連休前に参議院を通過した。まだ、衆議院での審議が残ってはいるものの、すでに国会での審議の山場を越えたといってよい。今回は、参議院法務委員会の論戦を通じて、ようやく見えてきた法案の含意と、入管法の今後の論点を解説したい。

●お題目としての「不法滞在者の半減」

 今回の改正案については、在留資格やビザの制度に詳しい関係者の間でも、その真意がなかなかわかりにくいものであった。とくに、在留資格(ビザ)の取り消し規定や、出国命令制度の新設、被退去者の再入国禁止期間の再定義といった部分が、みしゅっく的には重要なのだが、では外国人パートナーの立場にどんな影響を与えるのかという視点でみると、「いったいどうなっているのだ?」という声が、みしゅっくごときにまで数多く寄せられていた。

 国会の論戦の中で印象深く感じられたのは、まず、現在国内に約25万人いる不法滞在者を「今後5年間で半減させ」るという閣僚会議での決定の影響の強さだ。参院法務委員会の議論ではまさにこの決定が基調となっていることが幾度も強調され、各議員の質問もこれを踏まえたものになる。
 その閣議決定というのは、政府の「犯罪対策閣僚会議」が昨年2003年の12月に決定した「犯罪に強い社会のための行動計画」のことである。在留資格のない外国人という存在こそが「犯罪の温床」だということで、昨今の摘発強化にお墨付きを与える内容となっている。
 いわば政府の計画として、不法滞在者の数的な抑制が取り上げられ、しかも「半減」という数値目標を掲げたのである。具体性を欠き抽象的なレベルに留まる他の項目とは、一味違う意味を持つようになってもおかしくはない。「犯罪抑止の施策を打て」そんなハッパを、政府中枢から掛けられていたと、ある入国管理局幹部はもらしている。

 各メディアの反応も、報道向けの発表にしたがいこのラインの記事を掲載しているのであるが、そうとばかりもいえないところが、この法案を正しく理解する上で重要なところだ。

●だれもがあきらめ顔

 じつのところは、入管法の改正で不法滞在者が半減できるとは、法務省や入国管理局も考えていない。「法改正と取り締まりで、12.5万人が減らすなんてできるわけないじゃん」。そんなことは彼らも百も承知なのだ。
 法務委員会での答弁でも、そんな本音は隠し切れない。むしろ隠そうとも思っていないのじゃないかとさえ思えた。「他の政策と組み合わせた総合的な効果で不法滞在者の数を減少させたい」なんていっているのだが、これは直訳すれば「そんなに入管法や入国管理局に期待されても困ります」という意味の逃げ口上にすぎない。政府の行動計画といったって、達成の責任なぞ負わされるのは法務省とてまっぴらゴメンであるに違いない。

 かくして、「半減」のお題目には付き合わざるをえないが、素直にこのお題目に沿った意図を目指したものと考える分けにはいかない。このお題目を利用しながらじっさいはどこに真の目的があるかを考えなければならない改正だというところが、この改正案を正しく理解することを妙にむずかしくさせてしまったようだ。

(つづく)

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