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May 31, 2004

入管法改正論議を観戦して-6 (難民認定制度)

 すでに先週のうちに衆院での審議もおわり国会を通過成立してしまった入管法改正案を、こんな風に紹介して何の意味があるのか。そんな疑問を感じながらも、あと数回は続けようと思う。
 法案が可決したからといって、じっさいにその効果を大きく左右することになる政令(=施行規則)は、これから施行までの半年間に作成される。法務省・入国管理局が自ら起案し自己の権限で制定する施行規則は、いつも施行の直前に発表される。この施行規則がどんなタイムスケジュールで作成され、誰が関与することになるのかまで私は知らないのだが、ときにこれが法案以上に大切なところになりうる。
 それに今回はふだんの改正と違って前例のない難題が残されている。参与員制度の人選をどうするのかである。こればっかりは、じっさいに引き受ける人がいなけりゃならないので、法務省・入国管理局の権限といえども対外的な折衝が必要となる。半年後に大勢の参与員を集めるメドが立つかどうかは、非常に大切だし「観戦」しがいのあることのように思える。タイムスケジュールを考えてみても、半年後の施行日前にメンバーを固めようとするには、あと3か月以内、つまり9月初旬、遅くも10月の臨時国会の前におよその方針が固まっていなけりゃならないような気がする。*1
 というわけで、今回は注目の参与員制度を中心に国会審議を振り返ってみよう。

     *1……施行日を誤解していました。文末のコメントを参照してください 6/9  


(1)UNHCRや日弁連の推薦

 いったい、参与員の人選はどうなるのか、野党民主党の江田五月に対し増田入国管理局局長はこう答えた。
「日弁連に推薦をお願いする、あるいは御助言をいただくということは前向きに考えたい」「公正中立な方を御推薦いただけるのであれば、UNHCRからの推薦なり御助言をいただくことについても検討したい…」
 実質的な審議初日といえる4月8日のこのやり取りこそ、実質的な今国会のハイライトであった。

 同じ日、与党公明党の木庭健太郎と同局長は、かなり体系立ったやりとりをしている。その中には次のような答弁もあった。
「例えば公正中立な立場の団体、組織、あるいは有識者等に推薦をお願いして、その推薦いただいた方の中から法務大臣が選任することなども検討したい」
 もちろん、党の法務部会でのやり取りなど公明党と法務省には事前折衝の積み重ねがあり、事前にこうしたことはすでに打ち合わせ済みだった可能性が高い。この法案を巡る実質的な討議が行なわれた舞台はじつは公明党の法務や外国人政策の部会ではなかったかということを十分に感るのであるが、その分は差し引かねばならないにしても、木庭氏の質疑は実務面を詰めて考えるという意味で中身の濃いものであった。

 UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)や日弁連など、個々の申請案件でも入国管理局とことなる見解を公にしてきた組織を名指ししてその候補だと明言したことは、今後に大きな影響を与えるであろう。国会通過後もこの点はぜひ注目されるべきだ。


(2)内部審査と第三者機関のそのあいだ

 法案以前にちまたで議論されていたのは第三者機関によるチェックを入れるかどうかである。
 入国管理局でいったん難民認定を拒否されても、申請者は異議申立てをし、二次審査を請求することができる。ただし、この二次審査は、現在一次審査をして拒否した難民審査官が行なっている。仮に担当者を変えたとしても、身内であることには変わりはなく、まして最終的な決定の権限を持つ責任者レベルでは、まったく同様の顔ぶれが判断することになる。
 これでは、いったん下した認定がずさんなものだったような場合でも、ずさんだったと批判すれば、組織全体の面子にかかわってしまう。新証拠が提出されたなど特殊なケースを除けば、一次審査を否定するような結論は組織上の論理から得られるわけがない。
 一方、現状がまったく透明でもなければ公正でもない、ずさんそのものであるという認識に立つならば、現状をいかに修正するか、その切り札となるのは外部の第三者機関によるチェックである。現にこれしかないということで推進派の見解は一致している。
 民主党は「難民保護法案」を今回の国会に提出してたが、その内容はこのような推進派の見解を見事に盛り込んだものだ。

 もちろんこれまで入国管理局の行なってきたずさんな審査も、最終的に第三者機関によって覆されてしまうようなら、適切なものに変化せざるをえないだろう。一次審査など大半の業務は入国管理局が行なうことに変わりはないのだが、具体的な審査方法や認定基準について、局や省は決定権を事実上失い、第三者機関に譲り渡すことになる。

「取締りと在留資格や難民の認定業務とは密接な関係がある」
法務大臣と入国管理局長はこの答弁を幾度となく繰り返した。
「難民認定とは事実認定」に過ぎないという原則に忠実たろうとする立場からすれば、まるで「難民政策」みたいなものがあるかのような大臣らのこの説明は、まったく理解できない。
 権限こそ省益だとは言い古されたことばだ。しかしこの場合に限っては、実務は省内に残るのであるから、担当者の育成やノウハウの蓄積には何ら変更はない。犯罪や違反の手口に関する情報を共有するという意味でもこれまでどおりだ。最終的な判断とその責任は第三者機関に委ねられるのだから、同省が批判に晒される心配もなくなるというのに。
 もしかしたら入国管理局は、過剰な期待から開放されるチャンスを自らつぶしたように思える。
 そして、「身内でやりたい」としか理解できない先の答弁が何度も空虚に繰り返された。


(3)なにがポイントか

 なぜ間を取る必要があるのかそこらへんのロジック(理論)が弱いのは、この社会の慣わしであるとはいうものの、またしかり。参与員制度とは、この第三者機関と内部審査の中間形態である。そのイメージも今回の審議をとおしてかなり明らかになってきた。

 1事案あたり3人の参与員が審査して意見書を作成し、二次審査はその意見書を参考にして最終決定を下すというという仕組みだ。参与員のなかには現在の認定システムに疑問を持つ人も入れることで初めて第三者性が確保される。そこで冒頭で触れたようにUNHCRや日弁連の名前が挙がることになった。

 さて、ポイントをいくつか挙げよう。3人の参与員は、議論と意見の調整はするが、最終的にはバラバラに意見書を書く。そしてバラバラな意見書は意見書でしかない。極端な話ではあるが3人全員が認定すべしという意見であっても、その後の行政訴訟さえ覚悟すれば、その申請を却下することができるのである。

 そうなれば、果たして3人の参与員に反して下した決定が、裁判に耐えうるかどうかは、どのような事案がそうなるのかも含めて、気が早いといわれても、大変気になるではないか。まして、すでに冒頭で触れたとおり、この3人の参与員の中には、かならずしも法務省の言いなりにならないような人物が含まれそうな気配である。具体的な事案を考えれば、3人の中に1人はこれまでの認定に疑問をもつような人物が含まれるのかもしれない。国会での説明はまさにそのようなイメージなのだ。
 それが2対1ならどうか、逆に1対2ではどうか、ここらへんになると十分予測される範囲内となってこよう。

 推進派の立場からすれば、実際のケースで1人以上は参与員としてなるべく推進派に近い人物が担当するか否かが分岐点となる。多少テクニカルな領域の感もあるが、この観点から実務を左右する点を以下のように列挙することができる。

 ・だれが事案毎に参与員を人選するのか。

答弁:地方入国管理局の異議審査担当部局

 ・何人の参与員を任命するのか。
  

答弁:全国で十数人

 ・参与員には誰がどんな資料を与えるのか。

答弁:地方入国管理局の異議審査担当部局

 ・参与員には独自の関係者のヒアリングも含め調査権限があるのか。

 答弁:「ある」「政令で難民審査参与員には法務省令において所要の調査を求める権限を付与することを予定しております。それによりまして、現在、難民調査に係る法務大臣による適正な判断を行うために実施しております難民調査官による関係機関への照会とか、あるいは各国の政治状況等の事実調査の結果等、これが改正後におきましても活用することが可能であると考えております」

 ・参与員はどんな意見書を書き、申請者の手にそれが渡るのか。

答弁:「難民審査参与員の意見については、今申し上げたような趣旨を没却しないよう、具体的に記載して異議申立人本人に告知することを考えております。」
     「異議申立てを却下あるいは棄却する場合に難民審査参与員の意見と法務大臣の決定理由が異なるときには、ともに理由付記中にそれらを記載して、法務大臣が難民審査参与員の意見をどのようにしんしゃくしたのかが異議申立人本人にも分かるように告知することになります。」

 つまり参与員には決定権がないとしても、これまでまったく非公開だった審査を公開する効果はありそうなのだ。どのように事実が認定されたのか、そして不許可のポイントになった理由が明らかになる可能性がある。これは、法的には事実認定オンリーで考えるしかない「建前の砦」である法廷では、決定的な意味を持ちうる…、のかもしれない。


(4)参与員を引き受けるのはどんな人

 ようするに、運用しだいで効果的にも腑抜けにもできるという制度で、今後の動向にずいぶんな話題を提供していることがお分かりいただけただろうか。
 運用という観点からもうひとつだけ疑問点を挙げたい。それは、参与員を引き受ける人はどんな人かという予測である。じつは考えれば考えるほど、そんなん引き受ける人がいるのか? そんな感じも強く抱くのである。

 まず参与員がかなりハードワークになりそうだということである。全国で毎年およそ200人の申請者が異議申立てをしている。そして、予定されている人員は「十数名」なのである。さらに法務省の説明によれば、平均的には半年で一次審査がおわり次の半年で二次審査がおわり、合計1年で認定作業を終えるというのが、平均的なイメージだということになっている。
 まあ、この平均値は支援活動をしているグループも支援しきれない(=認定される目のより少ない)申請者もかなり含まれていると思われ、支援の輪が形成されているケースばかりを知っている私からすれば、異様に短いイメージだが、それにしても、参与員がかなりのハードワークになりそうではないか。
 大半のケースに関しては、省令で付与された調査権も行使できずに入国管理局が手渡す資料と本人のヒアリングぐらいで「流す」ことになるのじゃないだろうか。まあ、これはそんなもんかも知れないとは思わなくもないが、さて、そんな仕事を引き受けそうな具体的な人物とはだれだろう。たとえば弁護士だとしても、現在多数の申請者をクライアントにしながら貧乏事務所を決め込み、忙殺状態で活動しているんでる面々を思い起こしながら、「うーん」とうならざるを得ない。認定推進派は負担を分担しながら上手くここに人材を送り込む体制を整えられるだろうか…。

 で、「60日ルール」はどうなの? 「仮滞在制度」は? そういう声を気にしつつも、いったん本稿はおしまい。

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May 27, 2004

入管法改正案、衆院で可決成立

 ネット上の速報では"asahi.com"(朝日新聞)が流しておりました。
 たまたま聞いていたJ-WAVEでもニュース速報されていました。
みなさまはどちらでこのニュースをとらえたのでしょうか

             For"Mishuk on Line" minilogo.gif

難民審査中、強制退去なし 入管法改正案が可決・成立  asahi.com



 難民認定のあり方を抜本的に見直す出入国管理及び難民認定法の改正案が27日の衆院本会議で可決、成立した。82年に難民認定を始めて以来、初の制度改正となる。現行の運用には、諸外国に比べ難民認定数がはるかに少なく、手続きの中立・公平性に疑問があるとして国内外から批判がある。このため、不認定への異議の審査に民間有識者が参与員としてかかわり、判断に客観性を持たせることにした。

 日本が認定した難民は昨年までで315人にとどまる。今回の改正は、02年5月に中国・瀋陽の日本総領事館に北朝鮮からの脱出者が駆け込んだのに保護しなかった事件がきっかけとなった。

 現行制度は最初に難民かどうかを判断する際も、異議の審査も法務省が行っている。申請者が異議を申し立てている途中で収容され、十分な主張ができないケースもあった。一方で、明らかに難民に当たらない外国人が難民認定制度を乱用する例も見受けられ、難しい対応を迫られている。

 新制度では、(1)申請が入国から6カ月以内(2)難民認定申請が可能な第三国を経由していない、などの条件を満たせば、いったん仮滞在許可を出し、審査過程で収容される事態を避ける措置を新設する。さらに異議審査には民間人の参与員3人がかかわることにし、法相は参与員の意見を必ず聞いた上で判断する。参与員には、難民問題に詳しい十数人が任命され、1件ごとに3人が審査にあたる。専門家を加えることで難民性審査の質の向上を図る考えだ。

 今回の法案には、不法滞在者対策の強化策も盛り込まれた。悪質な不法滞在の罰金を現行の10倍の300万円に引き上げ、強制退去者の再入国への条件も厳しくした。一方、入管当局に自発的に出頭した人は簡単・迅速に出国させ、1年後の再入国も認める「出国命令制度」も創設。「アメとムチ」によって効率的に不法滞在者対策を実現するという。

      ◇      ◇

 ■改正入管難民法の骨子

【難民認定制度の見直し】

・申請者を対象にした仮滞在許可制度を創設する。要件を満たせば不法滞在者でも認定の可否が決まるまでは退去強制の対象としない

・難民不認定に異議があった場合、その審査に民間人の参与員3人の意見聴取を義務づけ

【不法滞在者対策】

・罰金を30万円から300万円に引き上げ

・悪質な不法滞在者の再入国拒否期間を延長 5年→10年

・自主的な出頭者には簡易に出国できる「出国命令制度」を創設。再入国拒否期間を短縮 5年→1年

【欠格条項】

精神障害がある外国人の入国を一律に拒否する規定の見直し

(05/27 13:29)


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東京地裁でアフガン難民勝訴

 本日午後1時25分、東京地方裁判所民事3部で、アフガン難民申請者M.J.氏に対する難民不認定処分取り消し、退去令状も無効とする判決が下された。東京地裁を舞台としたアフガン難民事件では、去る2月26日の勝訴判決に続く2件目の勝訴判決。
 M.J.氏は、難民申請をしながら仮放免中だったが、ニューヨークの9.11事件直後にまとめて収容されたアフガン人の一人。その後不認定の処分が下され、裁判所での争いに訴えていた。
 この事件では、難民としての信頼性とともに、今年2月には同様の他のアフガン申請者の訴訟も、原告が勝訴していたことから、(1)単なる取り消しではなく、前回と同様の「無効」判決となるかどうか。(2)裁判長が交代した民事第三部に変化はないか、という意味でも注目されていた。
 過去の行政処分を否定する判決として、判断等のあやまりだけを示す「取り消し」とことなり、「無効」は行政庁にあってはならない「重大な瑕疵(=誤り)」か、あるいは明白な「違法性」を指摘するものであり、入国管理局に対してきわめて厳しい判決が続いたことになる。
 さて今回はどんな判決だったのか。続報します。

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入管法改正案通過へ(付帯決議)

 ここで改正案の検討が終わらないうちに、昨日26日、入管法改正案の審議は衆議院法務委員会で裁決。以下の付帯決議をつけて、本会議に送付され、今日明日にも成立の見込みとなった。
 そんでもってそれでもコラムのほうは継続します。

出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 政府は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

一 退去強制手続、在留特別許可等の運用に当たっては、当該外国人の在留中に生じた家族的結合等の実情を十分配慮し、画一的な運用とならないよう留意すること。

二 新しい出国命令制度及び在留資格取消し制度の運用に当たっては、本邦に在留する外国人の生活および家族関係等に十分配慮すること。

三 難民認定申請者に対する仮滞在許可については、第三国を短期間で経由した者や経由国で有効な保護を受けられない者を許可の対象から排除しないように、上陸後六か月経過後の申請の場合も申請者の事情を十分斟酌し実情に即して但し書きを適用するように、仮滞在が不許可となったときも難民条約の趣旨に沿って仮放免制度の柔軟な運用をするように努めること。

四 難民認定手続のより一層の充実を図るため、難民調査官に対する国際情勢等に関する定期的な研修の実施、難民調査官の十分な人数の確保等に努めるとともに、手続の客観性及び透明性が確保されるよう適切に措置すること。

五 難民審査参与員制度については、専門性を十分に確保する観点から、国連難民高等弁務官事務所、日本弁護士連合会及びNGO等の難民支援団体からの推薦者から適切な者を選任するなど留意するとともに、難民審査参与員の調査手段が十分に確保されるよう体制の整備を図ること。

六 難民への生活支援に関しては、十分な予算の確保及びNGO等の民間の諸団体との連携の推進に努めるとともに、必要があれば支援体制の法制化なども含め、支援のあり方について検討を行うこと。

七 仮滞在許可制度、難民に対する在留資格の付与、難民認定における不服申立制度等、難民認定に関する各種制度のあり方について、その運用状況を勘案しつつ、必要があれば速やかに検討を行うこと。

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May 26, 2004

新シリーズ:上陸特別許可の道について

 あたらしいシリーズとして、不幸にも上陸拒否事由に該当してしまった外国人の夫や妻を呼び寄せるための手続きである「上陸特別許可」のハウツーものをここにはじめんとせむ。

 え、入管法改正案の審議の話はどうしたのかって?
 そっちも並行でやるということなのだけど、なにぶんにもそっちは時事ネタなので、どうしても書き下ろしが必要になって、苦しいわけです。
 だったらすでにありネタもあるので、そっちで展開してみようという安易な企画です。
 それにブログを使ってありネタを整理しながら、ちったあまとまった形で、見やすくお見せしようという狙いもあります。
 というわけで、このブログサイトは、今後2つの方向を持つということになりますのでご注意ください。更新順にだけ眺めていくと分けがわからなくなるかもしれません。

 過去ログを確認するためには、左にある「カテゴリ」のうちお好きなやつをクリックしていただければいいしわけで、初めて見て抱くような方にはそちらを利用していただくのが良いかと思います。

 当面この話題について参考となるページを3つご紹介して、まずはおしまい。

【みしゅっくオンライン】より
・ビザ申請待ち時間情報:上陸特別許可編】
  まずはこちらから基本情報を
・みしゅっく倶楽部メーリングリスト「上得するぞ!」
  こちらは、約100組が参加する当事者限定ML。ここで管理人を務めながら研鑚しています。
【自分のHP】より
・だれもが1年!「COME BACK FOR 1 YEAR !」 (キャンペーン行動計画案)
  やや硬い分ですが、状況がわかりやすくまとめてあります。

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May 23, 2004

入管法改正論議を観戦して-5 (難民認定制度)

 難民認定についてはあまり実践的なことをしていないので、解説するようなことに躊躇を感じなくもない。それでも今回の改正の目玉でもあるので、今回と次回の2回に分けて論じてみることにしたい。詳細にはあまり詳しくないので、正確さよりも分かりやすさを重視してみたのだが、うまくいくだろうか。

(1)難民認定者を増加させようとするものではない

「政策的に難民認定者を数的に増加させようとするものではありません」
 法務大臣のこの答弁が物語るように、今回の法改正は難民支援団体をはじめとする受け入れに積極的な意見をもつ人々の期待を大きく裏切る結果になるのかもしれない。瀋陽の日本領事館に駆け込んだ北朝鮮人を問答無用で中国の警察当局に引き渡し本国に送り返していたことが、ビデオ映像で公表されて以来続いてきた議論の到達点であるはずの改正も、こんな調子になってしまったのはなぜなのだろうか。

(2)まったく認定していない日本に毎年2~3百人が申請

 さてここで日本の難民受け入れの現状を分かりやすくいうと、日本の難民認定の実態はゼロ。いかなる国からの難民も認めていないと言うべき状態なのである。年間10人や20人の認定数はあるのだが、それがどうしたというのだ。政府は「先進国並の認定率」と言い、認定数が少ないのは申請者が少ないからといわんばかり、じゃなかった、じっさいにそう説明を繰り返している。
 統計をみてもインドネシアからの難民が一段落した80年代以降、毎年たった一ケタ、しかもその前半というお寒い認定実績を積み重ねてきていて、ようやく10だの20だのという数になったのは、ここ数年のこと。難民から見ればこの実績はゼロであるにちがいない。少なくとも受験生が東大を受けるよりももっと難しいのに、ここ数年の申請者は2~300人。実績を踏まえれば、むしろよくこれだけ申請する人がいるものだと関心したくなる。ちなみに、法案がすでに出来上がっていた2月、昨年2003年の認定数が発表されている。その数は10人と前年を4人下回るテイタラク。年末に4人家族が認定されてようやく2ケタに載せたようだ。

   (参考)難民認定申請及び処理数の推移

(3)日本の周囲には難民が少ない!?

 そう、大半の難民は日本は難民を認定しないと知って、はなから諦めているのである。だから日本には来ないし、申請者も少ないのだ。それでも、たまたま日本に入国するビザが取れたり、日本に親類や家族がいる人や、日本に留学など滞在中だった人が申請する。それだけでも300人を超えるのである。アジアだけでも北朝鮮、アフガニスタン、イラクと相次ぐ政治的抑圧や紛争や政権交代がある。そしてミャンマーやスリランカのようにホットな内戦が続いている国がある。まるで難民はアフリカや中南米やヨーロッパ周辺にしかいないかのような政府見解を聞くたびに、「なんでそんなん言えるの?」と不思議に思う。

(4)改正の目的は国際世論上の改善!?

 先に挙げたような国々を少しでも歩いたことがある人ならそういった状況は用意に感じられるものだし、もし難民キャンプを訪れた人なら「日本に行きたい」という声や「でも日本は難しいよね」という声に触れ、「ごめんなさい」と謝るかうつむくかするしかないという体験をしているのである。与党公明党や野党の議員の若手議員の質問の中には、随所に視察等で自分が体験したところから語り出す語り口がひとつのパターンとなっているが、多少ナイーブではあるとはいえこうしたところから「国際世論」を捉えようとする姿勢に好感を持った。
 今回の改正案も、この国際世論の改善をひとつの大きな目的に掲げている。ただし、それは数ではなくて、認定率や認定の公平性や透明性ということになる。ようするに他の先進国から批難されたときに、「あんたの国とも同等だよ」そう言い返せるように、準備はしとかにゃいけない。苦しい言い訳でもできればいい。
 ともに国際世論を気にしながらすれ違うのは、政府案が前提としている「国際世論」と難民認定推進派の主張する「国際世論」のそういう違いによるものだ。


(5)難民認定は事実認定

 それじゃあ、今回の法案によってまったく事態は改善される可能性はないのだろうか。
「ない」と決め付ける前に、もうひとつ分かりにくいことを指摘しておきたい。それは、法務省も入国管理局も難民認定の原理を事実認定としていることである。
 日本は難民を受け入れてはいないが、それは「難民」である人が申請していないからだという説明が繰り返されていることを先に述べたが、これは日本の難民認定が、「何人受け入れるべきか」とか「どこの国の人を受け入れるべきか」という立場に立っていないことの裏返しなのである。
 つまり、「政治的な理由で本国に帰れば生命の危険にさらされる」という状況が事実として認定されてしまえば、入国管理局はそれが何人だろうとおよそ認定を渋ったり断ったりできる立場にはない。
 このような立場をとりながらも、いいかげんで恣意的な判定を繰り返して難民ではないと拒絶してきたからこそ、認定はゼロで申請者は少ないという現状が保たれているのだ。つまり今日のような難民受け入れ状況を保つためには、いいかげんで恣意的な判定を継続しなければならないというわけだ。

(6)どこまで公正で透明になるのか

 だから冒頭でも紹介した「政策的に難民認定者を数的に増加させようとするものではありません」という大臣の答弁には、実は次のような続きがある。
「ただし、今回の改正の結果、その数が増加してしまうこともありえるわけですが…。」
 大臣とて「あまり公正になってしまうと、数が増えてしまいますよ」という忠告や脅しの意味で使ったわけではないだろう。そこまでの悪意は感じられなかった。
 しかし、推進派にとっては「公正さや透明性を高めれば、実質的に認定者数の増加が得られる」という見込みが十分に成り立つという事情は、以上の説明でお分かりいただけたことと思う。とくに日常的に支援活動に従事している人たちならば、これは明白なことのように感じられているのである。
 難民認定を知っている人ほど、大臣が「増やす意図はない」という改正に魂を感じることは難しい。現実に「公正かつ透明な認定」ならば認定者数の増加であり、その増加を予想しないということは、お茶を濁すための中身のない改正にちがいないと思えるのだから。

 今回の改正は、入国後60日以内に申請しなければ審査の対象にしないとする悪名高き「60日ルール」の撤廃や、申請中に在留資格を与える「仮滞在制度」、さらに不認定の決定を受けた申請者が入管外部の審査員に異議申立てができる「参与員制度」の新設が柱となるが、今回はその背景を説明するだけでだいぶ長くなったので、個々のテーマに触れる前に稿を改めることにしよう。

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May 21, 2004

入管法改正/衆院法務委員会「傍聴」メモ

本日は、自宅からネット経由のライブ中継で「傍聴」しています。
午前中は、与党の質問。自民党から下村博文、森岡正宏、公明党から
上田いさむの各議員が質問していました。

・衆議院TV
http://www.shugiintv.go.jp/top.cfm


以下はメモから、気になった答弁をいくつか紹介します。
仕事したり電話受けながらのメモなので、大事な
ことを聞き逃していたらご容赦。

また、午後の分は録音してMP3になっています。
グヌーテラ系のファイル共有ソフトで共有をかけときました。
音楽ファイルと同じ要領でで探せばあなたも
共有できるはず。ファイル名は、
syuin_homu20040521_No3.MP3
syuin_homu20040521_No4.MP3
です。
上記サイトで録画分がすぐに公開されるから
あまり意味はないかも。


■下村博文

・不法入国・不法上陸を出国命令の対象からはずすのはなぜ?

 法秩序の侵害の程度
 入国記録の確認が困難

・とすると不法滞在者のうちどれくらいが対象となるのか。

 平成14年 入管に出頭した人の約57%が対象になるべき
 案件だった。

・在留資格取り消しの趣旨

 瑕疵ある行政処分。効果を遡及・直ちに退去処分。
 禁欲的に使ってきた。

 在留資格の途中で調査することが現行法では認められていない。
 審査官に実態調査権限を付与する。
 
・倒産等本人に帰すべきでない場合や
 外国人が安心していられない

   

■上田勇

・1999年8月の付帯決議の尊重と在特の運用実態について
 日本人の配偶者や、日本人の子の養育にあたる親については
 じっさいどうなっているのか。

 その大多数を許可している。

・出国命令制度と同様の手続きを経た場合
 改正以前の出国分の案件については、遡及的に適用されるのか?
 
 出国を促さないので特別な配慮は考えていない。

 (この答弁に対し「考慮していただきたい。…うなずいていただいているようですね。」)

・半分は残る。摘発できない。
 潜伏をふかめ犯罪組織とのかかわりを深めるのではないか。

・難民制度の改正の基本方針について

 政策的に難民認定者を数的に増加させようとするものではない。
 結果的に増加してしまうこともありえるが…。


----------------------------------ここで一服

5月にはめずらしい台風も通り過ぎ、
本日午後の東京は快晴。
気持ちのよい昼下がり。
永田町の衆議院法務委員会のお部屋では、
入管法の改正案の審議がありました。
割りあてられた2時間のうち、半分を
自らが提出した難民認定法の法案の趣旨を
説明させるための、民主to民主のやり取り
が続きました。

そんなに審議の様子に精通しているわけではないけど、
野党同士のやりとりが続く審議の光景を見るのは初めて。
与党案だって、いつも同じことするわけだからなぁ。


そういえば来週火曜日の参考人に東京都副知事のタケハナの
名前があった。どういう人だったっけ。

-----------------------------------------以下審議のメモ再開

■小宮山よう子

緒方貞子の引用

・法も職員も取り締まりと円滑な認定や入国

・本当に実効性のあるものと考えているのか

増田:総合的に高ずることで減数になる

・99年の法改正後、再入国の件数はどれくらいか。

 おおむね拒否期間を経過していない段階。
 上特件数は増えており、

・再入国拒否期間の

1年ですからこのひとについてはどんどん来る可能性がある。

・取り消し制度に恣意的な運用は?

 広汎過ぎる規定だとは考えていない。
 調査権限をつかって調査を十分に尽くすことができる。
 異議申立ての仕組みはないが、あらかじめ意見を聴取しなければならないので、
 意見や主張をする機会は保証されている。

・外国人の家族の状況についてはどのように、

 家族の結合にも配慮した上で、公平性や数的な削減という目標、

・5月17日に成田到着しているアフガニスタン人、本日2時前の飛行機で帰国の予定。
 審査の流れの説明を。

 到着した外国人の審査方法は、ブースにいる審査官が、旅券・査証、目的、期間、上陸拒否事由該当の有無を審査。
 どうも問題や疑いがある場合は、口頭審理に回され、特別審査官の判断。
 不服があれば異議もそのあとに

・NGOマガリジャリフやJICAの現地職員の27歳、査証や帰りの航空券ももち、出迎えのものがいたのに帰国
 こちらから説明すれば、目的や予定に関して、招聘者との食い違いが見られたという話だった。
 通訳や、異議申立ての拒否にサインさせている過程に問題がなかったのか。

 個別の事案だから差し控えさせていただきたい。

・個別の事案とはいうが、

 通訳はアフガニスタン人がアフガニスタン語で通訳した。
 そんな言葉はないとただすとパシュトゥーン語の通訳という応え。
 秘書がダリ語を話す彼には通じないはずですねと確認すると
 通訳はパシュトゥーン語とダリ語を話すイラン人がやったと
 応えが3転した。

・本人が望んだら公開されるのですか?

 本人に対して説明して伝わっている。

・きちんと伝わっているかどうか、チェックする方法がない。
 
 適切な通訳能力を持っている。
 能力の有無はその場で慎重に判断する。

 やりとりを通じて疑いを持てば取り替える。

・通訳がどうなっているかは審査の鍵を握っている。
 彼が分かる言語で説明を受けたかどうかだけでも少なくとも答弁を。

 議員に説明をしていたのは法務省の職員で。
 ダリ語が使われいる。

・留学生就学生について、文部大臣は?

 日本で勉学するためには経済力が必要だとは思うが、
 真に勉強をする者には認めるよう…

・大臣に。総合的なビジョンが欠けており、必要だと思うが。

 出入国管理基本計画を12年3月の第二次計画では、不法滞在対策と、
 円滑な入国をとある。専門的な技術者については、いい人を余計に
 受け入れようということになっている。
 外国人との共生社会を目指しているのだと内外に理解を得たい。

・難民認定制度について。ともに同じ機関で行なわれるのは問題では?

 よい方にはぜひ来ていただくのだというのも出入国管理の役割。
 十分合理性がある。

・一次審査と二次審査の実施機関がともに入国管理局?

 今回は参与員制度を設け、多様な観点からの意見をいただく。
 透明性や公正性、中立性はこれまでより格段に高まる。

・参与員の意見が尊重されるための担保は?

・参与員の選出方法、構成、事務局体制について

 選任は、まず候補者を推薦していただき、その中から選ぶ。
 日弁連は当然UNCHRも考える。

 事務局は、法務省外の資料も必要なことから、行政不服審査法の適用がある。
 資料提供のための新たな事務局を設ける必要はない。

・難民申請者の摘発の例がある。申請者は原則として収容してはいけないと
 すべきではないか。

 難民認定手続き中の摘発は控えるという姿勢をとっている。
 子どもの収容については、家族全員がOSの場合ですが、
 子どもを極力収容しないようにしている。
 適切な預かり先が見つからない場合がありえても、
 短期におさえ、収容中は親と分離しないようにしている。


■山内おさむ

・民主党の難民認定法案の趣旨を聞く

 中村てつじ(民主党):根本的な制度矛盾を現行法は持っている。
   国際法など高度な専門性が必要だ。難民認定委員会を独立機関として
   設置する。

・60日ルールの撤廃の趣旨は?

 中村答弁

・申請から原則的に6か月以内に処分するという趣旨は?

 中村答弁

・難民規定基準をあらかじめ公表することにする趣旨は?

 中村答弁
   申請者の希望する通訳人、弁護人を保佐人にすることがあっていい。

・異議の申立て期間を7日間にしているのは

 政府;難民であるかないかをいちばん良く知っているのは本人であり、
    迅速な審査を目指しているからだ。

・裁判でも14日間の控訴期間が認められている。たいへん短い。

  中村:なぜ、60日だとか、7日だとか制限するのか、合理的な理由は
     これまでも明示されたことがない。
     行政不服審査法の適用を排除する理由もなく、これに鑑み
     同法の規定を援用して60日間の異議申立て期間とした。
     支援者や弁護士を探す、家族と相談するというのは時間が
     それくらいかかる。

・条約難民をのぞいた在留難民の規定があるが、それは誰を指すのか。

 中村:インドシナ難民など政策的な見地から認める難民のように

・生活支援の対象は?

 中村:条約難民とかわりなく、条約外難民を排除する理由はない。
    現行のインドシナ難民に対するような施策は残していきたい。

・難民認定制度、改正の趣旨

・難民申請者特別上陸許可・難民申請者在留特別許可制度の新設

 以下答弁はすべて今野あずま(民主党)
 現行では、有効な旅券を有しておらず、有効な上陸審査や上陸許可を受けていな
 い。このため、不法上陸の後に、申請を躊躇う傾向がある。
 退去強制処分を受けることがないために、難民申請者在留特別許可制度を。
 不法入国、不法上陸、不法残留を理由として退去強制処分をしない旨を
 さだめている。

・政府案の仮滞在制度との違いは?

 全体的に難民認定の処分前の暫定的な処置であり、安定性の確保が弱い。
 最大限保護するしくみを作った。
 仮滞在が上陸日からの期間制限を設けているが、民主党案にはこれはない。
 第三国から入国してくる外国人にも。
 住居や行動範囲はともにある。
 必要に応じて、指紋の押捺を強いることができるとする政府案は人権侵害
 の恐れ。
 難民認定が認められなかった場合に、他の在留資格を申請できる。

・乱用のおそれはないのか。

 特別許可を与えないこととする規定

  ・上陸拒否事由
  ・すでに収容されている
  ・留置中、拘置中
  ・

 がある。
 申請方法については、
  ・みずから自分の写真を持って出頭することを想定している。
  ・住居や行動範囲の制限を設ける。
  ・審査は原則6か月間であるから、それほど乱用のメリットはない。

・政府案では、迫害のある地域から直接入国した場合に限る。

 今野;入国ルートは問わない。


--------------------ここまで

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入管法改正論議を観戦して-4 (再入国禁止期間の再編)

 毎週火曜日と金曜日に開かれる衆院法務委員会での審議日程が固まった。本日21日に審議。週明け火曜日の25日は、午前中が参考人への質問と、質疑、そして27日の金曜日には裁決となる見込み。
 さて、今回は再入国禁止期間。1999年に、1年から5年に引き上げられたばかりの再入国禁止期間が、今回もまた改正される。再入国禁止期間とは、退去強制で帰国した外国人を原則として再入国させない期間のことだ。

(1)再入国禁止期間と上陸拒否事由

 再入国禁止期間は、入管法に規定される上陸(=入国)拒否事由のうちのひとつ。上陸拒否事由は、同法第五条の1に、日本に入国させてはならない外国人としていくつも列挙されている。
「麻薬関連の犯罪歴のある人」だとか、「売買春関連の犯罪歴のある人」だとか、「国内で懲役一年以上の刑事罰を受けたことのある人」なんていうのが書いてあるわけだけど、なかには「暴力で政府転覆を図ることを意図した団体の構成員」なんてのがあり歴史を感じさせる。そういえば、2000年のサッカーW杯の直前には、「フーリガン」の項目も追加されたっけ。まあ、ようするに悪いことをする人は入国させないという規定だ。

 今回改正される再入国禁止期間は、他に列挙されているものに該当するような悪人ではないけど、入管法に違反したことがあるような人に対して適用される。たとえば、オーバーステイのまま自ら帰国した人も、これまで法的には退去強制処分を受けたことになるから該当する。あとは、摘発をうけたものの送検されるほどではなかったため、刑事裁判にはならず、退去強制だけを受けたような人だ。

(2)1年でも10年でも、抑止されないリピーター

 はじめに断っておきたいのは、この再入国禁止期間だけでなく、一連のリピーター対策、それに罰金刑の上限の引き上げといった法改正は、ニュースの見出しにはなりやすいものの、政策的効果はまったく期待できないということである。不法滞在者数の抑制やリピーターの抑制にちっともならないということは、入国管理局や法務省は百も承知だ。
 なんで効果がないの? と疑問に思う方もいるかもしれないが、その理由はきわめてカンタン。過去に不法滞在歴があると分かっている人物の入国を認めることは、すでにまずありえないことになって久しいだから。
 もちろん「また来たよー」といって、すぐに帰ってくる人もいるのだが、この人たちは前回とは別のパスポートを使って違う名前で入国審査を受けている。入国管理局の審査はそんなものなのだ。

(3)100万でも300万でも科されたことのない「罰金刑」

 また、裁判所が罰金刑を科すことはまったくといっていいほどない。つまり上限をいくらにしようが、まったく当の外国人は関係がない。懲役刑を科すことに向かない、ごく例外的な事例でしか適用されないものなのだ。

(4)プロパガンダに騙されるメディア

 このように、罰金の上限や再入国禁止期間の変更は、国内世論むけに「厳しくしたよ~」という宣伝用キャッチフレーズに過ぎず実質的な意味など何もない。メディアを載せるための材料に過ぎず、むしろ実質的な手を打てないときの目くらましといってもいいのに、メディアはすぐに騙されてしまっているわけだ。あっしからすると、各メディアの記者はなぜこのことが分からないのかが不思議だ。

 本腰でリピーターを阻止しようと思えば、まず出入国者の指紋や虹彩など生体認証情報を採取・蓄積し、空港や港などすべての上陸審査のブースに認証端末を置いてチェックする以外にないし、今のような時代ではそのようなシステムの導入が、賛否はともかく、いつ検討されてもおかしくない。どこかの大国が「採用」を迫るような外圧がやってくるかもしれない。

(5)延長? それとも短縮? 安直なリピーターの定義

 将来の話はさておき、今回の改正の特色は、前述の出国命令により自ら帰国した外国人の再入国禁止期間を現行の5年から1年に短縮する一方で、2回目以上の不法滞在者を初回の不法滞在者と、理論上明確に区分けして、「悪質違反者」と決め付けたことである。なんとこのリピーターに与えられる禁止期間はなんと現行の5年から、一気に10年に引き上げられる。この分かりやすいけれどもきわめて安易な定義により、不利益を被るのは、偽パスポートを使えない事情にあり、「人道的」な再入国が例外的に認められてきた、日本人の配偶者をはじめとするごく狭い範囲の外国人でしかありえない。

(6)長期収容でネバるカップル対策?

 出国命令によって自ら帰国した外国人の禁止期間を1年に短縮した背景には、従前の1年より5年間に引き伸ばされた2000年以降、日本人と結婚した外国人が(あたりまえだが)まったく帰国しようとしなくなってしまったことや、摘発されてから交際関係にあった日本人と結婚、収容されながら「ネバリ」在留特別許可を求める事例が増えたことにある。在特の申請をしても認められなかったカップルが、もう後がないと行政訴訟に訴える事例も急増してしまった。このような事態を法務省が望んでいるわけでもなく、この点を是正しようという狙いにも見える。それにしては、2回目の違反のすべてがリピーターで10年? こんな一般規定を設けてしまうあたりが…。取締り強化のお題目に対する安直な「配慮」なのだろうか。

(7)正直者につらく、不正に誘うのは制度か人(運用)か

 再入国禁止期間を厳しくし続けてきた結果、退去時と同じ名義で再入国する「正直者」のカップルのみが馬鹿をみる制度が、すっかり出来上がってしまった。
 じつは収容されても在特をもとめてネバリ続けるカップルなど、かわいいものだ。入国拒否事由に該当するカップルに、ニセパスポートでイチかバチかの再入国にトライしてみようという誘惑を増大させた。逆「インセンティブ(誘引)」として働いているに違いないからである。

 この不正の連鎖を引き起こすのは制度なのか、それとも「正直者」のカップルに特例的な再入国を認めようとしない入国管理局の運用の問題なのか。おそらくその両方であるに違いない。
 前回扱った在留資格の取り消し制度に、入国審査で過去の滞在歴を隠して入国した「上陸拒否事由の潜脱(せんだつ)」を盛り込み、審議中でもなんの含みを持たせた答弁をしない入国管理局の姿勢は、こうした視点から見た配慮は微塵も感じられないものだった。

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May 20, 2004

入管法改正論議を観戦して-3 (在留資格の取り消し)

 昨日5月19日には衆院本会議で法案の趣旨説明が行なわれた。21日(金)には法務委員会での審議が始まり、早ければ来週末にも裁決になるかもしれないという情勢だ。はやくこの文章も完成させなきゃとあせるなかでの、第三回。


(1)有効期限前でも取り消し?
 出国命令と並んでもうひとつ今回の改正で新設される規定は、「在留資格の取消し制度」である。
「永住者」を除くすべての在留資格には、1年間だとか3年間といった有効期限がある。大半は申請すれば更新できるタイプだが、更新時に申請書と関連書類を提出させて再度審査されるわけで、現状では一度交付された在留資格の期限前に、在留資格が取消されることはほとんどない。

 たとえばもし離婚しても、日本人の夫や妻である外国人の「配偶者ビザ」が、すぐに取り消されてしまうことはない。有効期限が1年残っていれば、それまでは滞在を続けながら身の振り方を考えればよい。
 アルバイトに明け暮れて学校に行かなく(行けなく?)なってしまった留学生が捕まるのは、在留資格が取り消されるからではない。認められている時間を超えて働いていたことや、認められていない業種で働いていたことが責められているという理屈になっており。在留資格を取り消されているわけではない。

 この制度を作ったことで、バンバン怪しい人物の在留資格が取消されることになる…。という解説をメディア等で見受けるが、ちょっと冷静になるとそれは考えにくいことがすぐにわかる。まずは法案を見てみよう。

(2)取り消し理由1「申告した活動をしていない」

 改正案にある「在留資格の取り消し制度」は2つの内容を含んでいる。
 まずひとつは、申告されている入国目的とは異なる活動しかやっていないケース。学校に行かない留学生や就学生や、料理人のはずがじっさいには工場で勤めていたような場合である。

(3)日本人の配偶者等は対象外

 ちなみに「日本人の配偶者」の在留資格は、この意味での取り消し制度の対象外とされ、これまでどうり、更新手続きの審査で対応される。
 じっさいには労働者と変わらない状態で働いている「研修生」もその対象になるのだが、これは倫理的にはおかしな点を含んでいる。そんな働き方をさせている企業やあっせん業者にこそ責任がありそうなものだが、「研修生」ばかりが不利益を被ることになるからだ。

(4)取り消し理由2「不正な申請」

 取り消し制度のもうひとつの対象は、入国目的や経歴などを偽って入国手続きや更新手続きを踏んだケースだ。こちらは日本人の配偶者も対象になっている。
 なかでも、過去の犯罪や強制退去歴などいわゆる上陸拒否事由に該当することを隠して入国した場合は、即取り消しで退去強制するという最高に厳しい内容になっている。リピーター対策としての位置付けだ。
 それから、目的や身分を当初から偽って入国したケースについても退去処分となるという厳しい内容になっている。ここで身分というのは、残留孤児や日系人や日本人の配偶者といった家族関係が主となる。じっさいにはない家族関係をでっち上げた偽装のケースだ。

(5)帰国準備期間と自主出国

 とはいっても、前節(4)で指摘した以外の不正は、より軽微な不正とされている。そしてより軽微な不正の場合は、在留資格をその時点で取り消した上で、帰国準備期間を与え自主的に帰国させることになっている。
 アルバイトに忙しくなりすぎた留学生のように、入国後なんらかの事情で本来の活動が3か月以上出来なかったケースや、不正な申告のうち、卒業証明書や母国での経歴や収入などでニセの証明書を使ったケースでは、再入国禁止期間が長い退去強制処分にはならないで済む。

(6)誰がいつ使うフリーハンドか

 たしかに、入国管理局がかなりのフリーハンドを握ったことになる条文ではある。しかし、すでに更新時に審査をしていることや、すぐに調査できるスタッフがいるわけでもなく、このフリーハンドを使わなければならなくて、なおかつ人的に対処できるようなシーンがなかなか思い浮かばない、というのが率直な感想だ。
 現状でも更新の度に審査しているのだから、その上さらに調査と審査をして取消すようなオペレーションを広く行なうことは事実上不可能だし、その必要性は希薄なのだ。

 まず、実行性ということを考えれば、槍玉に挙げられている日本語学校に所属する就学生のように、その時々に浮上するテーマに沿って重点的な運用をすることがありえなくもないが、そうしたテーマを扱う専属タスクチーム編成をするわけでもない。つまり、バンバン取り消すようなやり方をするには、実務を担う人力の裏づけが見当たらないのである。統計的に扱えるような効果は期待できず、あくまでレアなケースを扱うのがせいぜいではないだろうか。

 次に、必要性ということで言えば…。
 典型的な例と想定されているのは、学業を放り出している留学生にしても、いまさら法改正を必要とするわけではない。外国人の扶養家族や留学生のための在留資格のように、就労が禁じられているか制限されている在留資格で、認められた範囲外の職業に就いていた場合には、認められない就労を根拠に退去を強制できる規定がすでにある。
 ただし現行で規定されている退去事由は、非公認の就労活動を「もっぱら行なっている」場合と規定されているので、何でもかんでも送還という現在の運用が司法の判例で覆される可能性がないわけではない。
 現に、係争中の事例のように、熱心に勉強していた優秀な学生が退去処分を受け「退去はひどい」と訴訟に持ち込んだケースで、裁判官が同情を示ししている事件がある。退去をちらつかせながら「任意に」出国を選ばせたほうが無難という、見方は十分に成り立つ。

 対応できる人的資源から推測すると、おそらくその対象は「密告」のうち緊急性があるものに限られることになるだろう。密告を受けて本人に事情を聞き、退去をちらつかせながら「自供」を得て「任意出国」に持ち込む。これなら、これまでよりグレーゾーンで放置してきた部分に踏み込めるかもしれないし、もしじっさいは入国管理局の勇み足になってしまったとしても、「自供」があり本人が「任意出国」しただけだから、いきなりの収容・退去処分とちがって行政訴訟に持ち込まれることもなくなる。そんなことが想定されているのかもしれない。

(7)従来型の取り消しとの関係

 長々とみれば見るほど「真意」のわからない新制度だと、ここまで付き合っていただいた方なら、すでに、お分かりいただけたことと思う。
 最後に、本当はここが目的なのかもしれないと思わせる点をひとつだけ指摘しておくことにする。

 メディアではまったく指摘されていないが、じつはこれまでも、在留資格が取消されることがなかったわけではない。
 日系人や残留孤児であることを偽って入国し、数年後にこの偽りが露見したような場合には、これまでも在留資格の取り消しが行なわれてきた。
 親子関係を偽るいわゆる「ニセ残留孤児」や「ニセ日系人」のケースであるが、これとてあくまで更新の機会を捉えて対処するのが一般的だが、すでに期限のない「永住者」の資格を持つ場合にはこの手法を採用することはできない。そこで、有効な在留資格が取り消されることになっていた。

 入管法には取り消し制度がなかったのに、なぜそれができるのであろうか。それは一般論として、「不正な申告に基づいて行政機関が行なった処分を取り消すことができる」という考え方があり、これにしたがって取り消されているのだ。
 ただし、このような一般論による取り消しは、手続き的な規定がまったくないうえに、その処分が行なわれた時点に遡(さかのぼ)り取り消されることになるため、法的な権利義務関係に大きな影響を与えることになる。そういう法律的な理論上の問題がある。…という指摘がある。
 摘発の時点までに、在留資格があることを前提に受け取られている雇用保険や生活保護などの給付金はどうなるのか。せこい話が山ほど持ち上がりかねないというのだ。
 事実上その不正受給の回収なんて不可能だと思われるが、摘発時点や、最終的な審査時点までしか取り消される期間が限定されることになって、そうした影響が少なくなると説明されている。しかしまあ、もし不正受給だとしても、退去されてしまえばその回収のメドなどたつわけがないと済まされてきただけの話だから、とくに回収を狙うわけでもない今回の改正にとくにメリットを見出すことはできない。
 残留孤児の支援にあたる人権団体の中には、上記のような観点と、形式的には取り消し制度に事前に本人に聴聞する規定があることには評価を示し、「これまでのようにある日突然取り消しがやってくる」という現状の改善に期待する声がないわけではない。
 それじゃあ、一般論による取り消しを今後しなくなるのかどうかという点はでは、不明朗さを残している。ある入国管理に詳しい弁護士は「聴聞を規定する以上、その規定に抜け道を与える従来型の取り消しはできない」と指摘する。
 
 残留孤児関係でもすでに日本生活が長くなっている昨今では、日本社会に定着している度合いが強くなっている。たとえ最初は不正による入国であっても、その事情によっては在留特別許可が無難かつ適切と思われるケースも増えているだろう。もしかすると、収容や退去処分の前にワンクッション置き、吟味する機会を設けたいのだとすれば、あるいはこの取り消し制度は有効に機能しうると言えるかもしれない。
 もし、この意味で取り消し制度を用いるとするれば、人道的な配慮の広がりを意味している。ただし、半減を表向きの基調とする今回の改正論議では、たとえこれが本音であったにせよ、それを明言することがはばかれているのであろうか。


【5/27に追加の関連記事】
血縁なしで退去処分33人 残留孤児ら在留許可訴え

 中国残留日本人の子供として来日したのに、養子や継子で血のつながりがないため退去強制命令を受けた人が、大阪府や九州に少なくとも9家族計33人いることが24日、支援団体「中国残留日本人の継子・養子の家族を支援する連絡会」のまとめで分かった。
 家族が退去を求められた中国残留日本人らは同日、東京・霞が関の厚生労働省内で記者会見し「家族をばらばらにしないで」と在留特別許可を認めるよう訴えた。
 会見したのは、熊本県在住の中国残留孤児井上鶴嗣さん(63)ら。連絡会によると、退去を求められた33人のうち13人がやむなく中国に帰国し、一部は退去処分取り消しを求める民事訴訟を起こしている。
 井上さんは、中国で結婚した妻が前夫との間にもうけていた娘2人とその家族が来日後、入管に収容された。会見で「娘とは長年一緒に暮らして自分の子と同じ。一緒に暮らせないのは納得できない」と訴えた。
(共同通信)[2004年5月24日]

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May 14, 2004

入管法改正論議を観戦して-2 (出国命令制度)

 前回は、閣僚会議が昨年12月に発表した「5年間に25万人の不法滞在者を半減する」という決定(=行動計画)が、難民入管法の改正に強く影響を与えているものの、それは建前に過ぎないため、ややこしいことになっているという点を指摘した。今回からしばらく、主な改正項目を順にみて行きたいと思う。


●出国命令制度:現状の追認と合理化

 それほど目立たないが、新設される制度のなかに「出国命令」という制度がある。これは、自分から帰国を望んで入国管理局に出頭した不法滞在者に対して、複雑な手続きを必要とする正規の強制送還の手続きを踏むことなく、もっと簡単に帰してしまうための制度であり、不法滞在者に自主退去を促す「アメ」であるという。
 ただ、ちょっとでも入国管理局の業務を知っている身から見ると、これはどう見ても現行の取り扱いをなぞっただけで、「新設」というほど新味が感じられるものではない。すでに日常的に行なっている業務の流れに法的基礎を与えるタイプの改正である。いくぶんかは業務を簡素化する効果を持つのだろうが、とくに自ら出頭する外国人にとって新たなメリットはない。

 ここで、在留資格のない外国人が自ら帰国を望んだ場合にどんな手続きが必要になっているのか、現状についてカンタンに紹介しておこう。
 在留資格がなければたとえ帰国しようとする場合でも、そのままでは港から出国することはできない。入国管理局で違反の事実を確認し退去処分を受ける必要があるからだ。
 帰国手続きのために入国管理局に出頭すると、パスポートや本人の証言で違反内容を確認し、入国記録と照合して、その日はいったん帰宅することになる。帰国便のエアチケットを購入してから、10日から2週間後に再びもう一度出頭しなければならないが、こうすれば出発日当日には自ら空港に行って、母国までの飛行機に乗れることになる。
 ちなみに日本に滞在する外国人の間では、直訳すると「投降」という意味だが「サレンダー」と呼んでいるのをよく耳にする。退去強制の意味である「デポテーション」と思っていないのか、思いたくないのか、そのへんの意識で捉えられているようだ。

 入国管理局の業務としては、この間に違反事実に関するレポートを調査員が作成し、審査員がそれを読んで「はい、退去ね」と令状を作成することになる。もちろん違反事実といったって、東京入国管理局にでもなれば毎日三桁の出頭者がいるわけだから、大半は形式的に行なう以外にない。しかし、法的には退去強制には変わりない。人の身体に強制することだけに、形式的には慎重な手続きになっている。

 今回新設される出国命令制度は、本人が出国を希望し出頭した場合に、「令状」まで必要ないだろうということで実態として収容していない現状を追認した上で、ハンコの数を減らす程度ではあるが業務の効率化が図れる。
 これまで慣例として行なっていたプロセスは、すべての違反者をいったん収容することが前提となっている現行制度では、大げさにいえば異例の措置にあたる。これに法的根拠を持たすことになるわけだ。
 出国命令に必要な要件も明文化したので、事実の確認項目も明確になり、じつは重要人物を取り逃がしてしまった場合など、将来的に起こりうる不測の事態では、浴びることになる批判も和らぐというものだろう。

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May 13, 2004

入管法改正論議を観戦して

 難民認定の改正と不法滞在者の半減を目指した法案は連休前に参議院を通過した。まだ、衆議院での審議が残ってはいるものの、すでに国会での審議の山場を越えたといってよい。今回は、参議院法務委員会の論戦を通じて、ようやく見えてきた法案の含意と、入管法の今後の論点を解説したい。

●お題目としての「不法滞在者の半減」

 今回の改正案については、在留資格やビザの制度に詳しい関係者の間でも、その真意がなかなかわかりにくいものであった。とくに、在留資格(ビザ)の取り消し規定や、出国命令制度の新設、被退去者の再入国禁止期間の再定義といった部分が、みしゅっく的には重要なのだが、では外国人パートナーの立場にどんな影響を与えるのかという視点でみると、「いったいどうなっているのだ?」という声が、みしゅっくごときにまで数多く寄せられていた。

 国会の論戦の中で印象深く感じられたのは、まず、現在国内に約25万人いる不法滞在者を「今後5年間で半減させ」るという閣僚会議での決定の影響の強さだ。参院法務委員会の議論ではまさにこの決定が基調となっていることが幾度も強調され、各議員の質問もこれを踏まえたものになる。
 その閣議決定というのは、政府の「犯罪対策閣僚会議」が昨年2003年の12月に決定した「犯罪に強い社会のための行動計画」のことである。在留資格のない外国人という存在こそが「犯罪の温床」だということで、昨今の摘発強化にお墨付きを与える内容となっている。
 いわば政府の計画として、不法滞在者の数的な抑制が取り上げられ、しかも「半減」という数値目標を掲げたのである。具体性を欠き抽象的なレベルに留まる他の項目とは、一味違う意味を持つようになってもおかしくはない。「犯罪抑止の施策を打て」そんなハッパを、政府中枢から掛けられていたと、ある入国管理局幹部はもらしている。

 各メディアの反応も、報道向けの発表にしたがいこのラインの記事を掲載しているのであるが、そうとばかりもいえないところが、この法案を正しく理解する上で重要なところだ。

●だれもがあきらめ顔

 じつのところは、入管法の改正で不法滞在者が半減できるとは、法務省や入国管理局も考えていない。「法改正と取り締まりで、12.5万人が減らすなんてできるわけないじゃん」。そんなことは彼らも百も承知なのだ。
 法務委員会での答弁でも、そんな本音は隠し切れない。むしろ隠そうとも思っていないのじゃないかとさえ思えた。「他の政策と組み合わせた総合的な効果で不法滞在者の数を減少させたい」なんていっているのだが、これは直訳すれば「そんなに入管法や入国管理局に期待されても困ります」という意味の逃げ口上にすぎない。政府の行動計画といったって、達成の責任なぞ負わされるのは法務省とてまっぴらゴメンであるに違いない。

 かくして、「半減」のお題目には付き合わざるをえないが、素直にこのお題目に沿った意図を目指したものと考える分けにはいかない。このお題目を利用しながらじっさいはどこに真の目的があるかを考えなければならない改正だというところが、この改正案を正しく理解することを妙にむずかしくさせてしまったようだ。

(つづく)

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