« 入管法改正論議を観戦して-3 (在留資格の取り消し) | Main | 入管法改正/衆院法務委員会「傍聴」メモ »

May 21, 2004

入管法改正論議を観戦して-4 (再入国禁止期間の再編)

 毎週火曜日と金曜日に開かれる衆院法務委員会での審議日程が固まった。本日21日に審議。週明け火曜日の25日は、午前中が参考人への質問と、質疑、そして27日の金曜日には裁決となる見込み。
 さて、今回は再入国禁止期間。1999年に、1年から5年に引き上げられたばかりの再入国禁止期間が、今回もまた改正される。再入国禁止期間とは、退去強制で帰国した外国人を原則として再入国させない期間のことだ。

(1)再入国禁止期間と上陸拒否事由

 再入国禁止期間は、入管法に規定される上陸(=入国)拒否事由のうちのひとつ。上陸拒否事由は、同法第五条の1に、日本に入国させてはならない外国人としていくつも列挙されている。
「麻薬関連の犯罪歴のある人」だとか、「売買春関連の犯罪歴のある人」だとか、「国内で懲役一年以上の刑事罰を受けたことのある人」なんていうのが書いてあるわけだけど、なかには「暴力で政府転覆を図ることを意図した団体の構成員」なんてのがあり歴史を感じさせる。そういえば、2000年のサッカーW杯の直前には、「フーリガン」の項目も追加されたっけ。まあ、ようするに悪いことをする人は入国させないという規定だ。

 今回改正される再入国禁止期間は、他に列挙されているものに該当するような悪人ではないけど、入管法に違反したことがあるような人に対して適用される。たとえば、オーバーステイのまま自ら帰国した人も、これまで法的には退去強制処分を受けたことになるから該当する。あとは、摘発をうけたものの送検されるほどではなかったため、刑事裁判にはならず、退去強制だけを受けたような人だ。

(2)1年でも10年でも、抑止されないリピーター

 はじめに断っておきたいのは、この再入国禁止期間だけでなく、一連のリピーター対策、それに罰金刑の上限の引き上げといった法改正は、ニュースの見出しにはなりやすいものの、政策的効果はまったく期待できないということである。不法滞在者数の抑制やリピーターの抑制にちっともならないということは、入国管理局や法務省は百も承知だ。
 なんで効果がないの? と疑問に思う方もいるかもしれないが、その理由はきわめてカンタン。過去に不法滞在歴があると分かっている人物の入国を認めることは、すでにまずありえないことになって久しいだから。
 もちろん「また来たよー」といって、すぐに帰ってくる人もいるのだが、この人たちは前回とは別のパスポートを使って違う名前で入国審査を受けている。入国管理局の審査はそんなものなのだ。

(3)100万でも300万でも科されたことのない「罰金刑」

 また、裁判所が罰金刑を科すことはまったくといっていいほどない。つまり上限をいくらにしようが、まったく当の外国人は関係がない。懲役刑を科すことに向かない、ごく例外的な事例でしか適用されないものなのだ。

(4)プロパガンダに騙されるメディア

 このように、罰金の上限や再入国禁止期間の変更は、国内世論むけに「厳しくしたよ~」という宣伝用キャッチフレーズに過ぎず実質的な意味など何もない。メディアを載せるための材料に過ぎず、むしろ実質的な手を打てないときの目くらましといってもいいのに、メディアはすぐに騙されてしまっているわけだ。あっしからすると、各メディアの記者はなぜこのことが分からないのかが不思議だ。

 本腰でリピーターを阻止しようと思えば、まず出入国者の指紋や虹彩など生体認証情報を採取・蓄積し、空港や港などすべての上陸審査のブースに認証端末を置いてチェックする以外にないし、今のような時代ではそのようなシステムの導入が、賛否はともかく、いつ検討されてもおかしくない。どこかの大国が「採用」を迫るような外圧がやってくるかもしれない。

(5)延長? それとも短縮? 安直なリピーターの定義

 将来の話はさておき、今回の改正の特色は、前述の出国命令により自ら帰国した外国人の再入国禁止期間を現行の5年から1年に短縮する一方で、2回目以上の不法滞在者を初回の不法滞在者と、理論上明確に区分けして、「悪質違反者」と決め付けたことである。なんとこのリピーターに与えられる禁止期間はなんと現行の5年から、一気に10年に引き上げられる。この分かりやすいけれどもきわめて安易な定義により、不利益を被るのは、偽パスポートを使えない事情にあり、「人道的」な再入国が例外的に認められてきた、日本人の配偶者をはじめとするごく狭い範囲の外国人でしかありえない。

(6)長期収容でネバるカップル対策?

 出国命令によって自ら帰国した外国人の禁止期間を1年に短縮した背景には、従前の1年より5年間に引き伸ばされた2000年以降、日本人と結婚した外国人が(あたりまえだが)まったく帰国しようとしなくなってしまったことや、摘発されてから交際関係にあった日本人と結婚、収容されながら「ネバリ」在留特別許可を求める事例が増えたことにある。在特の申請をしても認められなかったカップルが、もう後がないと行政訴訟に訴える事例も急増してしまった。このような事態を法務省が望んでいるわけでもなく、この点を是正しようという狙いにも見える。それにしては、2回目の違反のすべてがリピーターで10年? こんな一般規定を設けてしまうあたりが…。取締り強化のお題目に対する安直な「配慮」なのだろうか。

(7)正直者につらく、不正に誘うのは制度か人(運用)か

 再入国禁止期間を厳しくし続けてきた結果、退去時と同じ名義で再入国する「正直者」のカップルのみが馬鹿をみる制度が、すっかり出来上がってしまった。
 じつは収容されても在特をもとめてネバリ続けるカップルなど、かわいいものだ。入国拒否事由に該当するカップルに、ニセパスポートでイチかバチかの再入国にトライしてみようという誘惑を増大させた。逆「インセンティブ(誘引)」として働いているに違いないからである。

 この不正の連鎖を引き起こすのは制度なのか、それとも「正直者」のカップルに特例的な再入国を認めようとしない入国管理局の運用の問題なのか。おそらくその両方であるに違いない。
 前回扱った在留資格の取り消し制度に、入国審査で過去の滞在歴を隠して入国した「上陸拒否事由の潜脱(せんだつ)」を盛り込み、審議中でもなんの含みを持たせた答弁をしない入国管理局の姿勢は、こうした視点から見た配慮は微塵も感じられないものだった。

|

« 入管法改正論議を観戦して-3 (在留資格の取り消し) | Main | 入管法改正/衆院法務委員会「傍聴」メモ »

Comments

De nombreux cheat et hack son disponible sur les nouveaux jeux qui sortent sur les terminaux mobile.

Posted by: how to hack clash of clans no survey | July 24, 2015 at 10:05 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/33387/628777

Listed below are links to weblogs that reference 入管法改正論議を観戦して-4 (再入国禁止期間の再編):

« 入管法改正論議を観戦して-3 (在留資格の取り消し) | Main | 入管法改正/衆院法務委員会「傍聴」メモ »