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May 14, 2004

入管法改正論議を観戦して-2 (出国命令制度)

 前回は、閣僚会議が昨年12月に発表した「5年間に25万人の不法滞在者を半減する」という決定(=行動計画)が、難民入管法の改正に強く影響を与えているものの、それは建前に過ぎないため、ややこしいことになっているという点を指摘した。今回からしばらく、主な改正項目を順にみて行きたいと思う。


●出国命令制度:現状の追認と合理化

 それほど目立たないが、新設される制度のなかに「出国命令」という制度がある。これは、自分から帰国を望んで入国管理局に出頭した不法滞在者に対して、複雑な手続きを必要とする正規の強制送還の手続きを踏むことなく、もっと簡単に帰してしまうための制度であり、不法滞在者に自主退去を促す「アメ」であるという。
 ただ、ちょっとでも入国管理局の業務を知っている身から見ると、これはどう見ても現行の取り扱いをなぞっただけで、「新設」というほど新味が感じられるものではない。すでに日常的に行なっている業務の流れに法的基礎を与えるタイプの改正である。いくぶんかは業務を簡素化する効果を持つのだろうが、とくに自ら出頭する外国人にとって新たなメリットはない。

 ここで、在留資格のない外国人が自ら帰国を望んだ場合にどんな手続きが必要になっているのか、現状についてカンタンに紹介しておこう。
 在留資格がなければたとえ帰国しようとする場合でも、そのままでは港から出国することはできない。入国管理局で違反の事実を確認し退去処分を受ける必要があるからだ。
 帰国手続きのために入国管理局に出頭すると、パスポートや本人の証言で違反内容を確認し、入国記録と照合して、その日はいったん帰宅することになる。帰国便のエアチケットを購入してから、10日から2週間後に再びもう一度出頭しなければならないが、こうすれば出発日当日には自ら空港に行って、母国までの飛行機に乗れることになる。
 ちなみに日本に滞在する外国人の間では、直訳すると「投降」という意味だが「サレンダー」と呼んでいるのをよく耳にする。退去強制の意味である「デポテーション」と思っていないのか、思いたくないのか、そのへんの意識で捉えられているようだ。

 入国管理局の業務としては、この間に違反事実に関するレポートを調査員が作成し、審査員がそれを読んで「はい、退去ね」と令状を作成することになる。もちろん違反事実といったって、東京入国管理局にでもなれば毎日三桁の出頭者がいるわけだから、大半は形式的に行なう以外にない。しかし、法的には退去強制には変わりない。人の身体に強制することだけに、形式的には慎重な手続きになっている。

 今回新設される出国命令制度は、本人が出国を希望し出頭した場合に、「令状」まで必要ないだろうということで実態として収容していない現状を追認した上で、ハンコの数を減らす程度ではあるが業務の効率化が図れる。
 これまで慣例として行なっていたプロセスは、すべての違反者をいったん収容することが前提となっている現行制度では、大げさにいえば異例の措置にあたる。これに法的根拠を持たすことになるわけだ。
 出国命令に必要な要件も明文化したので、事実の確認項目も明確になり、じつは重要人物を取り逃がしてしまった場合など、将来的に起こりうる不測の事態では、浴びることになる批判も和らぐというものだろう。

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